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山田厚史の「世界かわら版」

TPPより怖い2国間交渉、トランプのしたたかさを侮るな

山田厚史 [デモクラTV代表・元朝日新聞編集委員]
【第123回】 2016年11月24日
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 「大統領に就任したその日にTPPから離脱する」。トランプ氏のビデオメッセージが公開された。安倍首相がアルゼンチンで「米国抜きでは意味がない」と語った1時間後だった。2人は4日前に会った。「信頼できる指導者であることを確信した」と褒め称えた首相は、見事に無視された。

 メディアは「米国の保護主義」というトーンで書いているが、「自由貿易か保護主義か」というモノサシは20世紀の遺物だ。

 注目すべきは「TPP離脱」ではない。「TPPの代わりに」という後段に毒が盛られている。「雇用や産業を米国内に取り戻すため、公平な二国間の貿易協定を交渉してゆく」というメッセージだ。

 自由で開かれた経済圏を環太平洋に、などと綺麗ごとをトランプは言わない。二国間交渉でお前の市場を取りに行く、という宣言である。

 標的は日本。すでに下地はできている。

大統領候補がこぞって
TPP反対の陰に製薬業界

 TPPの陰で日米は「並行協議」と呼ぶ二国間交渉を秘密裏に続けてきた。TPP協定が合意された2月4日、並行協議の成果はフロマン米通商代表と佐々江駐米大使の間で「交換公文」にまとめられた。

 そこには日米が引き続き協議する項目が列挙され「公的医療保険を含むすべての分野が交渉の対象になる」と明記された。二国間交渉こそ日米の主戦場なのだ。

 TPPは米国の主導で進んだが、米国は結果に満足していない。“米国”とは、議会の共和党、交渉を後押しした多国籍企業、戦略を陰で立案したロビイストなどTPP推進派のこと。任期中に実績となる「レガシー」を残したいオバマは最終局面で譲歩したと怒っている。

 例えば知的財産権。バイオ医薬品の特許期間は「8年」で決着した。製薬業界は「敗北」と感じている。米国の主張は「20年」だった。それがオーストラリアなど薬剤消費国の抵抗に遭い押し戻された。交渉をまとめるためにベタ降りしたのだ。

 推進派の急先鋒・ハッチ上院議員は「8年では短すぎる」とオバマの交渉を批判した。同議員は「製薬会社から2年間で500万ドルの政治献金を受けていた」とNYタイムスに報じられた族議員である。

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山田厚史 [デモクラTV代表・元朝日新聞編集委員]

やまだ あつし/1971年朝日新聞入社。青森・千葉支局員を経て経済記者。大蔵省、外務省、自動車業界、金融証券業界など担当。ロンドン特派員として東欧の市場経済化、EC市場統合などを取材、93年から編集委員。ハーバード大学ニーマンフェロー。朝日新聞特別編集委員(経済担当)として大蔵行政や金融業界の体質を問う記事を執筆。2000年からバンコク特派員。2012年からフリージャーナリスト。CS放送「朝日ニュースター」で、「パックインジャーナル」のコメンテーターなど務める。

 


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元朝日新聞編集員で、反骨のジャーナリスト山田厚史が、世界中で起こる政治・経済の森羅万象に鋭く切り込む。その独自の視点で、強者の論理の欺瞞や矛盾、市場原理の裏に潜む冷徹な打算を解き明かします。

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