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GE変化の経営
【第2回】 2016年11月25日
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熊谷昭彦

“デジタル・インダストリアル・カンパニー”
実現に向けてGEが目指す3つの柱

GE124年の歴史で9人目のトップとなる現会長兼CEOのジェフリー・イメルトは、社史上最大の売りと買いともいわれた、金融事業のGEキャピタル売却と仏アルストムの発電・送配電事業買収を総仕上げとして、産業インフラ部門に集中する大規模なポートフォリオ入れ替えを進めてきました。そして、GEをもう一歩先に進めるため、さらに新しい挑戦に踏み出しています。

 イメルトが目指すのは「デジタル・インダストリアル・カンパニー」である。主力とする産業インフラ部門で、各事業ごとにひしめきあっている競合相手より一歩先を行くには、より付加価値を高める必要がある。そのために、これから最も必要とされるもの、最も付加価値として顧客に認めてもらえるものとして、IoT(Internet of Things=モノのインターネット)を選び出した。

 いままで培ってきたハードウェアのテクノロジーを提供するだけにとどまらず、そこから集めたビッグデータを分析し、それらの機器をより効率的に、より安全に運用できるソリューションを併せて提供できることがこれからの勝ち組になる一番のポイントであると考え、大きな情熱をもって活動している。

イメルトが抱いた危機感

 この一連の改革を押し進めてきた背景にあったのは、危機感だった。GEはこれまでテクノロジーを重視して大きな投資を行ってきたが、製品の技術競争だけでは明確な差別化が難しい時代になっている。その一方でグーグルやアマゾンに代表されるITカンパニーやソフトウェア・カンパニーが伸張し、彼らはソフト単品でなく、ハードウェアをより便利に効率的に使うためのソフトウェアも提供し始めており、付加価値の源泉はハードそのものより徐々にそちらに移りつつある。

 我々のようハードウェアカンパニーは、いくら世界中に産業機器を納めているとはいえ、このままいけば陰の存在になってしまう恐れがある。彼らITカンパニーの基本的な戦略は、ハードウェアからデータを拾い上げ、そのデータをソリューションに加工して顧客に提供し、付加価値を感じてもらうことにある。彼らに主導権を握られれば、我々ハードウェア・カンパニーは彼らに箱モノを提供するだけの存在になりかねない。

 そうならないよう、ハードとソフトの両方をできる体制を目指したのだ。ITカンパニーにはガスタービンや航空機エンジンなどのハードウェアはつくれない。そこで、ソフトウェアとデータ・アナリティクス(データ解析)に思い切った投資を行い、従来の「ハードウェア・テクノロジー・カンパニー」に加えて「ソフトウェア・ソリューション・カンパニー」の強みを併せ持つ会社を目指す。言い換えれば、「デジタル技術と産業機器の統合と活用」である。この戦略が実現すれば、GEのさらなる成長が期待できる。

 我々にとってソフトウェア分野への進出は経験のないことであり、大きな賭けでもある。しかし、将来を考えればこれに挑むしかない。成功させれば必ず最強の会社になれる、という信念のもとにイメルトは決断に至った。

 GEが目指すこの「デジタル・インダストリアル・カンパニー」実現の原動力として、イメルトは次の3つを挙げている。

1.インダストリアル・インターネット
2.ブリリアント・ファクトリー
3.グローバル・ブレイン

 1つ目は、私たちがいま盛んに提唱している「インダストリアル・インターネット」だ。いわゆるIoTである。いろいろな産業から吐き出されるビッグデータを分析してソリューションを生み出し、顧客の生産性向上につなげていく。たとえば、これまでに蓄積された航空機エンジン等から得られる運航、気候、整備といった各種データをアルゴリズムに基づいて分析し、航空機の運航調整や飛行計画を最適化しコスト削減を支援するソリューションを世界31社の航空会社と契約している。ある航空会社は年間約10億円ものコストダウンが図れたという実績が出ている。そのほかディーゼル機関車や風力発電でも同様のソリューション提供を進めている。

 2つ目は「ブリリアント・ファクトリー」だ。新しい製造技術や材料、設計技術、一例を挙げれば3Dプリンタなどの導入や製造プロセスの可視化を通じて、これまでの素材や工程ではできなかった製品、あるいは今までにないスピードでそれをつくる。新しい技術を貪欲なまでに取り入れ、従来よりも飛躍的に進んだ製造業に変化していくことを狙いとしている。一例に、次世代航空機エンジン「LEAP」の燃料ノルズがある。従来は18個の部品を蝋付けや溶接で組み立てていたが、いまは3Dプリンタで一体成型するようになった。加工工程が短縮されたうえ、25という大幅な軽量化を果たすとともに強度もアップした。

 3つ目は、私たちは「グローバル・ブレイン」と呼んでいるが、一般にいうところのオープン・イノベーションである。インターネットを通じて世界中のありとあらゆる役に立つアイデアや知恵を取り込むと同時に、私たちの技術もできるだけ公開して、外部の協力を仰いで新しいものを開発する。要するに、社内ですべてを開発する必要はないということである。ただ言うは易しで、私たちのような長い歴史のある会社には、自社のテクノロジーに自信と誇りを強くもつベテランのエンジニアが数多くいる。当初は外部からアイデアを募ることに大きな抵抗があったようだが、実施してみると社内で誰も思いつかなかったようなアイデアが集まり、今ではエンジニアたちも開発手法のひとつと認識するようになっている。

 一例が、2013年に実施した3DCADをテーマに世界中のエンジニアやデザイナーが参加するオープンコミュニティ「GrabCAD」とのコラボレーションだ。次世代航空機エンジンの重要なパーツの設計と製法を世界中から募集した。すると56ヵ国から700件以上の応募がアリ、最終的にインドネシアの若いエンジニアのアイデアが最高点を獲得して採用された。もちろん安全性についてはGEが徹底的に評価しているが、こうしたプロセスは過去には考えられなかったことだ。このほか、大学生を対象に下「インダストリアル・リミックス・チャレンジ」という既存製品の新たな用途を考えて貰うコンテストも開始している。

 それぞれ、GEにとっては大きなカルチャーチェンジとなるが、この3つを柱として、新しい製造業になることが現在の目標となっている。

▼より詳しくは新刊『GE変化の経営』へ。上記のような事業戦略面の変化を推進すべく、人材の評価・教育、組織の文化などにおいても変革を進められており、次回以降はそうした点を紹介していきます!

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熊谷昭彦(くまがい・あきひこ)

GEジャパン株式会社代表取締役社長兼CEO、GEコーポレート・オフィサー(本社役員)。1956年兵庫県生まれ。79年カリフォルニア大学ロサンゼルス校経済学部卒業。三井物産入社。84年ゼネラル・エレクトリック・カンパニー(GE)入社。2001年1月日本ジーイープラスチックス社長、同年12月GE東芝シリコーン社長兼CEO。06年GEコンシューマー・ファイナンス社長兼CEO、GEコーポレート・オフィサー(現任)。07年GE横河メディカルシステム(現GEヘルスケア・ジャパン)社長兼CEO、09年GEヘルスケア・アジアパシフィックのプレジデント兼CEO。11年GEヘルスケア・ジャパン会長。13年12月より現任。


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世界最大にして最速の組織は、いかに変革を実現してるのか? 日本人唯一のコーポレートオフィサー(本社役員)が、IoT時代の勝者たる“デジタル・インダストリアル・カンパニー”実現に向けた事業戦略から組織文化に至る変革について余すところなく語り尽くします。

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