ハイブリッドではなく、e-POWERという名称を用いるのも、トヨタのHVとの差別化を図る狙いがある
Photo by Akira Yamamoto

「ハイブリッド(HV)車とは言ってほしくない。既存の電気自動車(EV)とは一線を画した、まったく新しいEVの提案だから」。西川廣人・日産自動車共同CEOは、11月に発売された新型「ノート」への期待をあらわにした。

 新型ノートには、「e-POWER」と呼ばれる最新鋭のパワートレインが搭載されている。電気を用いてモーターで車輪の駆動を行うが、その電気の供給は全てエンジンで発電して行う。一般的に、「シリーズハイブリッド」と呼ばれるシステムであり、その意味ではHVである。だが、エネルギーとしてガソリンを使う点は既存のEVとは異なるものの、走行性能はEVそのもの。実質的には、充電不要のEVとも言われている。

 新型ノートの狙いは、競争が最も激しいコンパクトカー市場のてこ入れだ。このクラスの最大のライバルには、トヨタ自動車のHV「アクア」が存在する。2016年度上半期の国内販売では、アクアが8万台に対して、旧型ノートはその半分の4万台。もはやHVなしにこのセグメントで競争することは難しい。日産は新型ノートの燃費と価格を、アクアのそれらとほぼ同じ水準に設定することで、この市場での巻き返しを図り、不調が続いた日本市場での存在感を取り戻す考えだ。

 しかし、それだけではない。実は、e-POWERの真の狙いは、リーフに代表されるEVの再復活である。というのも、リーフの世界累計販売台数は23万台と、全EVの中で断トツの台数を誇るが、11年に発表した中期経営計画でのルノー・日産のEV全体の目標販売台数である150万台には、遠く及ばない。

 その中で、駆動系をリーフと共通化するe-POWERの普及を進めることで、技術開発と市場開拓の二つを同時に進めようというわけだ。「新型ノートのモーターとインバーターはリーフと共通なので量産効果が期待でき、ノートのような普及モデルでEV化を進めることで、消費者にもまずはEVの走りの良さを味わってもらうことができる。」(矢島和男・日産EV・HEV技術開発本部アライアンス グローバル ダイレクター)。