90年代から「深い関係」にあった
ソニーと日産がリチウムイオン電池撤退
最近、「次世代のクルマ」といえば、自動運転やライドシェアリングが話題の中心だ。
一方で、EV(電気自動車)については、テスラやアップルの自動運転車の「構造の一部」として取り上げられる程度に止まっている。EVが「次世代のクルマ」の話題の中心だった5~6年前と比べて、社会の状況は大きく変わった。
そうしたなか、7月末から8月上旬にかけて、ソニーと日産がそれぞれ、リチウムイオン電池事業から撤退することが報道された。
この2事案には直接的な関係はないのだが、実は、2社はEV向けのリチウムイオン二次電池において「深い関係」にある。
EVだけでなく、携帯電話など日常生活で欠かせない最新型の電池であるリチウムイオン電池。その原理は欧米で発明され、その後に大学などで基礎研究が進んだが、商品として大量生産したのは、日本のソニーが最初だ。
筆者は、ソニーのリチウムイオン電池開発の初期段階で重要なポジションにいた人物と交流があったが、彼の言葉を借りると、開発当時は「試練の連続」だったという。量産化に踏み切ってからも、試練は続く。日産の小型EV「ハイパーミニ」向けに世界初の車載用リチウムイオン二次電池を提供したが、電池の性能を安定化させるための努力は「甚大だった」と語る。
また「ハイパーミニ」の企画者も筆者の知り合いなのだが、当時の日産社内では「EVは時期尚早」という声が主流であるなか、ソニーとの協業を含めてかなり強引に事が進んだようだ。その背景には、新しいクルマの発想をできるだけ早く具現化させたいという、彼自身のエンジニアとしての夢があった。
だが、事業としての結果は惨敗。ハイパーミニの需要は“官民のお付き合い”がほとんどであり、商品として短命に終わり、その結果として、ハイパーミニなどEVに関係した日産とソニーのエンジニアの一部が会社を去った。