わが国における分譲マンションの数は現在約562万戸、居住人口は約1400万人(国交省発表2009年末現在)。およそ9人に1人が住んでいる計算になり、今や分譲マンションは日本における居住形態の1つとしての確固たるポジションを確立しつつある。特に1990年代後半からは、安定的に年間20万戸前後のペースで供給が増え続けており、都心部を中心に分譲マンションの数がこの10年で急速に拡大した。

 分譲マンションを購入する際は、購入者にとって高額な買い物となるため、どうしても物件そのものの立地やスペック、価格といったものに主眼がおかれてしまいがちだ。ただその一方で、90年代後半から管理会社と管理組合におけるトラブルや大規模修繕工事時の問題などが顕在化したことによって、購入後の「管理」のあり方や管理会社の品質の重要性も注目されはじめた。また、2001年には「マンションの管理の適正化の推進に関する法律(マンション管理適正化法)」が施行され、「マンション管理士」制度やマンション管理業者の登録制度の創設等、さまざまな新しい試みがスタートした。

 そうした環境の変化のなかで、巷で良く聞かれるようになったのが「マンションは管理を買え」というフレーズである。

 これは、購入後の資産価値を左右するのは、まさに「管理のあり方」であり、購入時にこそ、その「管理」に注目し、管理サービスや管理の質が高いと思われるマンションを購入すべきであるという意味を含んでいる。しかし、この言葉はマンション購入者に2つの「疑問」や「勘違い」を与えてしまっているようだ。

管理は100%提供されるものではない?
「マンションは管理を買え」への2つの疑問

 まず、1つ目の疑問として挙げられるのが、「管理は買うものなのか」という基本的な命題についてだ。

 管理とは、ホテルのサービスのように居住者側が100%サービスを受ける側であり、その対価として支払った管理委託費によって管理会社が全てのサービスを提供するといった概念で納まるものではない。本来、自分の資産であるマンションの価値を保つために、居住者自らが行なわなければならないものである。戸建の所有者が自ら庭の草むしり、家の前の掃き掃除、時にリフォームや修繕を行なうことと比較すればわかりやすい。