詐欺まがいで、
労基法の大切さを痛感した不動産会社

 株式会社ソナーレ(東京都/不動産賃貸管理)は、楽器可・ピアノ可の賃貸物件に特化したユニークな会社です。現在、東京、神奈川、埼玉を中心に、約2000室を管理しています。

「5、6年前は、深夜まで仕事をしたので、車中で寝たこともありました(笑)。部屋のリフォーム時、業者は徹夜で工事をしますが、中には、やったフリをして逃げる人もいたから、最後まで見届ける必要がありました。繁忙期は、1週間、車中に着替えを入れて、スーパー銭湯でシャワーを浴びて、車中泊したこともあります」(丸山朋子社長)

 丸山社長は、現在、「楽器が弾けるマンション」に特化していますが、かつて一時期だけ、一般の不動産業に触れたことがあります。

「当時の私に採用権限はなかったのですが、不動産業は人の出入りが激しくて、1年間で60人雇用して、3人しか残りませんでした。不動産業界は、『流れ者』も多く、労働基準法を意識させられる事件にも見舞われたことがあります。
 ある方が、パートの面接にきたときのことです。面接時に、『エクセルもできます。ワードもできます。こんなことも、あんなこともできます』と言うので、店長が採用を決めた。その方は『2週間後から出勤したい』と申し出たので了承したが、いざ入社したら、エクセルもワードも何もできなかったのです。
 そこで、解雇することにしたら、採用後1週間を超えていたので(試用期間を超えていた)、解雇予告分の給料を請求されました。後になって、ハローワークの方から『あの人は常習だから、気をつけてください』と注意を受けたが後の祭りでした」(丸山社長)

 こうした不動産業界の悪習を断ち切るため、現在、丸山社長は、「残業の事前申請」(申請がないと残業代は支払わない)、「帰社時間の設定」(夜8時をすぎていいのは、緊急のトラブルに対処する場合のみ)、「水曜日と木曜日はノー残業デー」「シフト休を使って月1回は連休を取らせる」など、さまざまな早帰りの施策を取り入れています。

「労働基準局の方と社労士さんに協力していただき、『1年単位の変形労働時間制』も導入しています。変形労働時間制は、業務の繁閑に合わせて労働時間を少なくし、全体として労働時間を短縮することを目的にした制度です。
 繁忙期は夜7時まで、閑散期は夜6時までと決め、さらに閑散期でも、プラス1時間の固定残業代を払っています。
 夜6時で帰っても1時間余分にお金をもらえるから、社員は早帰りをする。苦肉の策ですが、効果はあると思います。今は、ほとんどの社員が夜7時から8時の間に帰っていますね。繁忙期の基準で見ると、閑散期は4日しか働いていないから、長期休暇を取ることもできます」(丸山社長)