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長内 厚のエレキの深層

儲からない「iPhone向け有機EL」に投資する日本企業の危うさ

長内 厚 [早稲田大学商学学術院大学院経営管理研究科教授/早稲田大学台湾研究所研究員・同IT戦略研究所研究員/ハーバード大学GSAS客員研究員]
【第19回】 2016年12月2日
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来年発売のiPhone8に向けて
有機ELに投資する日本の矛盾

来年発売のiPhone8に採用されるという有機ELパネルに投資することは、日本メーカーにとって本当に商機だろうか

 台湾の経済日報が11月21日に報じたところによると、鴻海精密工業はiPhone以外のスマートフォンの生産を拡大しているという。鴻海が設計・製造する韓国SKテレコム向けのLUNAブランドのスマートフォンが好調で、韓国だけでなくインドネシア市場にも参入し、本年度3000万台の生産が見込まれているという。

 経済日報によると、今年度の鴻海の好業績はiPhoneだけでなくLUNAシリーズの成功が大きな要因になっているということだ。鴻海傘下の富士康(Foxconn)は中国西部に新工場を建設、Huawei向けのスマートフォン専用工場を稼働させ、5年間で2億台の販売を計画している。さらに、別の子会社である富智康(FIH Mobile)はノキアを買収し、自社グループのスマートフォン販売にも注力している。もちろん、子会社のシャープもスマートフォン生産メーカーだ。

 iPhone7については、「好調」というニュースと「鈍化」というニュースが入り交じっているが、Androidと比較したiOSのシェアは年々下がってきているし、スマートフォンというカテゴリー自体がコモディティ化し始めており、今までのような高級ブランドによる差別化戦略がどこまで通用するか怪しいものであることは、本連載第15回『iPhone7拍子抜けで見えた、アップル依存大国・日本に迫る脅威』でも指摘したところだ。

 そうした中で、来年にも発売されるという「iPhone8」には有機ELパネルが採用されると言われており、サムスン電子やシャープ、ジャパンディスプレイがパネルの供給元としてささやかれ始めている。日本メーカーはアップルの言うことを聞いて、有機ELに投資をすべきなのだろうか。

 有機ELについて、筆者は連載第9回『「にわか有機ELブーム」に飛びつく電機各社の浅慮』でも懐疑的な意見を述べたが、今回はもう一歩踏み込んで、日本はむしろ有機ELを、プラズマパネルのように「過去のもの」と見なして葬り去る戦略を採るべきであることを主張したい。

 昨今、日本でも「有機ELパネルの生産に乗り出すべき」という論調が目立ってきたが、戦略的にも技術的にも、日本にとって有機ELへの投資はプラスにならないからだ。

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長内 厚 [早稲田大学商学学術院大学院経営管理研究科教授/早稲田大学台湾研究所研究員・同IT戦略研究所研究員/ハーバード大学GSAS客員研究員]

京都大学大学院修了・博士(経済学)。1997年ソニー株式会社入社後、映像関連機器部門で商品企画、技術企画、事業本部長付商品戦略担当、ソニーユニバーシティ研究生などを歴任。その後、神戸大学経済経営研究所准教授を経て2011年より早稲田大学ビジネススクール准教授。2016年より現職。早稲田大学IT戦略研究所研究員・早稲田大学台湾研究所研究員を兼務。組織学会評議員(広報委員会担当)、ハウス食品グループ本社株式会社中央研究所顧問、(財)交流協会貿易経済部日台ビジネスアライアンス委員。(長内研究室ホームページ:www.f.waseda.jp/osanaia/

 


長内 厚のエレキの深層

グローバル競争や異業種参入が激化するなか、従来の日本型モノづくりに限界が見え始めたエレキ産業は、今まさに岐路に立たされている。同じエレキ企業であっても、ビジネスモデルの違いによって、経営面で大きな明暗が分かれるケースも見られる。日本のエレキ産業は新たな時代を生き延び、再び世界の頂点を目指すことができるのか。電機業界分析の第一人者である著者が、毎回旬のテーマを解説しながら、独自の視点から「エレキの深層」に迫る。

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