ダイヤモンド社のビジネス情報サイト
長内 厚のエレキの深層

「にわか有機ELブーム」に飛びつく電機各社の浅慮

長内 厚 [早稲田大学商学学術院大学院経営管理研究科教授/早稲田大学台湾研究所研究員・同IT戦略研究所研究員/ハーバード大学GSAS客員研究員]
【第9回】 2016年6月1日
著者・コラム紹介バックナンバー
1
nextpage
液晶ディスプレイの次世代新技術「有機EL」に、電機各社がにわかに熱い視線を送り始めた。しかし、そのブームには落とし穴がある

「にわか有機ELブーム」に
飛びつく電機各社の皮算用

 液晶ディスプレイの次世代新技術「有機EL」(有機エレクトロルミネッセンス)という言葉を耳にしたことがある人は多いだろう。海外ではOLEDと呼ばれる。有機(オーガニック)の「O」に発光ダイオードの「LED」、つまり有機素材を用いたLEDということだ。

 液晶パネルは、パネルそのものが発光しているのではなく、液晶は光を通す、通さないをコントロールしているので、液晶パネルの背後には光源となるバックライトがあり、前面には色をつけるためのカラーフィルターが存在している。一方、有機ELは有機素材に電圧をかけると自発光(素材そのものが光る)するので、バックライトやカラーフィルターなどの余計な部材が必要なく、部品点数を減らすことでコストダウンが容易になるというポテンシャルがある。

 また、自発光する有機素材は印刷に近い技術で基盤に塗布することができるので、薄型化やフレキシブル化が容易とも言われている。

 2000年代半ばには有機ELが次世代テレビの本命として、韓国サムスン電子とLG電子が試作機を発表して話題となっていたが、その後一時沈静化していた。サムスン電子は同社のハイエンドスマートフォンに有機ELを採用してきた程度で、大きくクローズアップされることもなかったが、昨秋アップルが次世代iPhoneに有機ELを採用すると発表してから、にわかに業界を騒がせている。

 iPhone生産を手がける鴻海精密工業もシャープと一緒に有機ELを開発すると息巻き、日本の液晶パネルメーカーのジャパンディスプレイ(JDI)や中国メーカーも、こぞって有機ELに参入するという。

 しかし、有機ELにはいくつものハードルがある。また、それを越えても今までにない素晴らしい世界がメーカーにも消費者にも訪れるのかと言えば、筆者にはどうもそうではないように思える。今回は、電機各社がにわかに熱い視線を送り始めた有機ELの将来性について、分析してみよう。

1
nextpage
関連記事
スペシャル・インフォメーションPR
クチコミ・コメント

DOL PREMIUM

PR
【デジタル変革の現場】

企業のデジタル変革
最先端レポート

先進企業が取り組むデジタル・トランスフォーメーションと、それを支えるITとは。

経営戦略最新記事» トップページを見る

最新ビジネスニュース

Reuters

注目のトピックスPR

話題の記事

長内 厚 [早稲田大学商学学術院大学院経営管理研究科教授/早稲田大学台湾研究所研究員・同IT戦略研究所研究員/ハーバード大学GSAS客員研究員]

京都大学大学院修了・博士(経済学)。1997年ソニー株式会社入社後、映像関連機器部門で商品企画、技術企画、事業本部長付商品戦略担当、ソニーユニバーシティ研究生などを歴任。その後、神戸大学経済経営研究所准教授を経て2011年より早稲田大学ビジネススクール准教授。2016年より現職。早稲田大学IT戦略研究所研究員・早稲田大学台湾研究所研究員を兼務。組織学会評議員(広報委員会担当)、ハウス食品グループ本社株式会社中央研究所顧問、(財)交流協会貿易経済部日台ビジネスアライアンス委員。(長内研究室ホームページ:www.f.waseda.jp/osanaia/

 


長内 厚のエレキの深層

グローバル競争や異業種参入が激化するなか、従来の日本型モノづくりに限界が見え始めたエレキ産業は、今まさに岐路に立たされている。同じエレキ企業であっても、ビジネスモデルの違いによって、経営面で大きな明暗が分かれるケースも見られる。日本のエレキ産業は新たな時代を生き延び、再び世界の頂点を目指すことができるのか。電機業界分析の第一人者である著者が、毎回旬のテーマを解説しながら、独自の視点から「エレキの深層」に迫る。

「長内 厚のエレキの深層」

⇒バックナンバー一覧