先日、じつに興味深いイベントに参加してきた。

 ある酒販店が企画した「第一回アル添酒なめんなよ(笑)の会」にである。「純米酒あってのアル添酒であることは間違いない。でも、アル添酒にもいい奴がいるのに、知らないで死んじゃったらもったいない。ただし、気持ち入れて造った酒に限るけど……」という店主の御託(失礼)に強烈なシンパシーを感じたのだ。

「アル添」とはアルコール添加の略称であり、いわゆる純米系酒(純米吟醸、純米大吟醸を含む)には用いない醸造用アルコール(「醸造アルコール」と表記している場合もある)を添加した酒を総称して「アル添酒」と呼ぶ。

 日本酒ファンの中には「純米酒こそが本物の日本酒である」と妄信している輩は少なくないし、店主と同じく否定するつもりはない。

『いざ、純米酒』(弊社刊)の著者であり“酒造界のご意見番”こと上原浩氏(故人)は、同著で純米酒への原点回帰を軸に酒造りの極意を伝授。氏は第一線の酒造技術者として60年近く現役で活躍。「酒は純米、燗ならなおよし」の至言を遺したとして、今なお慕うファンも多い。

 上原先生は純米酒の燗をこよなく愛する一方、アル添酒はもちろん、生酒や原酒も好まなかったという(無濾過生原酒ファンとしては納得がいかない部分ではある)。

 だからといって、僕はアル添酒自体を蔑むようなことはしたくない。

 自分の舌で判断して「飲むに値する酒が是であり、そうでなければ飲まなければいい」という是是非非主義を貫くだけのことだからである。

一般消費者には謎の原料
醸造用アルコールの功罪

 こういう書き出し方をしたのには理由がある。

 今年1月、国税庁が発表したデータをグラフにしてみたので、ご覧いただきたい。本醸造酒以上のスペックで造られる特定名称酒の割合は日本酒全体の中では3割強にすぎず、それ以外の酒(「普通酒」と呼ばれ、その多くがスーパーや量販店などで紙パックとして売られている低価格商品)が7割近くを占めていることがわかる。

 しかも、特定名称酒の中でもアル添をしない純米系酒の製造数量は、その半分にも満たない7万3585kl(前年比95.2%)というのが現況である。

 すなわち、市場に出回っている日本酒の7本のうち6本近くが醸造用アルコールを添加しているタイプということになる。