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日本を元気にする新・経営学教室

競争力を奪う不条理な均衡状態
=多品種少量生産の罠から抜け出す道
神戸大学大学院経営学研究科教授 加登 豊

内田和成 [早稲田大学大学院商学研究科教授],加登 豊 [神戸大学大学院経営学研究科教授],成生達彦 [京都大学大学院経営管理研究部教授],髙木晴夫
【第2回】 2011年2月7日
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 常識を疑うことが、閉塞状況にある日本企業には必要である。少しずつの変化には、わたしたちはあまり抵抗を感じることはない。そして、緩やかな変化の結果もたらされた均衡状況は、安定だと思い込んでしまう。しかしながら、安定はしばしば競争力の低下につながる。

 顧客ニーズへの対応のため、日本企業は多品種少量生産化を志向した。様々な生産技術革新を通じて、多品種少量生産であっても、大量生産とかわらないほどのコスト(製造原価)、リードタイム、品質、生産性などを実現してきた。

 血のにじむような努力の積み重ねの結果として、競争力ある多品種少量生産体制が確立された。これはまぎれもない成功物語である。しかしながら、この成功が静かに日本企業を蝕み始めていることに、気づいている者は少ない。

 どのような問題に私たちが今直面しているかを、以下に示そう。

(1)研究開発―開発の質に
   大きな悪影響を与える

 多品種少量生産を目指すなら、当然、開発品目数は増加する。多品種少量生産の定着により、製品寿命も短くなった。したがって、開発に与えらえる時間も短くなっている。

 製品寿命と開発時間に相関があると仮定しよう。10年前と比較して、製品寿命が3分の1になり、新規開発品目数が5倍になっていて、開発要員数と開発予算額に変化がないとすれば、1品目に許容される開発要員1人当たり開発時間数は、10年前の15分の1になっている。これは、かなり控えめに見た数字である。

 CADの高度化、モジュール設計の進化、部品の共通化・共有化などがあるので、実際の開発要員1人当たり開発時間数は、10年前の15分の1以上あると思われるが、10年前ほどの時間が与えられているとは思えない。また、1品目に許容される平均予算額も減少することになる。

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内田和成(うちだ かずなり) [早稲田大学大学院商学研究科教授]

東京大学工学部卒、慶應義塾大学経営学修士(MBA)。日本航空を経て、1985年ボストンコンサルティンググループ(BCG)入社。2000年6月から04年12月まで日本代表。09年12月までシニア・アドバイザーを務める。BCG時代はハイテク・情報通信業界、自動車業界幅広い業界で、全社戦略、マーケティング戦略など多岐にわたる分野のコンサルティングを行う。06年4月、早稲田大学院商学研究科教授(現職)。07年4月より早稲田大学ビジネススクール教授。『論点思考』(東洋経済新報社)、『異業種競争戦略』(日本経済新聞出版社)、『スパークする思考』(角川書店)、『仮説思考』(東洋経済新報社)など著書多数。ブログ:「内田和成のビジネスマインド

 

加登 豊(かと ゆたか) [神戸大学大学院経営学研究科教授]

1953年生れ。78年3月神戸大学大学院経営学研究科博士課程前期課程修了、86年4月大阪府立大学経済学部助教授、94年1月神戸大学経営学部教授、99年4月神戸大学大学院経営学研究科教授、2008年4月~10年3月経営学研究科長・経営学部長。『インサイト管理会計』『インサイト原価計算』『ケースブック コストマネジメント』『管理会計入門』など著書多数。

成生達彦(なりう たつひこ) [京都大学大学院経営管理研究部教授]

1952年生まれ。78年横浜国立大学大学院経済学研究科修士課程卒業、81年京都大学大学院経済学研究科博士後期課程修学、89年米国ノ-スカロライナ州立大学大学院卒業(Ph.D.)、81年南山大学経営学部に就職、94年に教授、同年京都大学博士(経済学)、98年京都大学大学院経済学研究科教授、2006年京都大学大学院経営管理研究部教授、2008年~09年京都大学大学院経営管理研究部研究部長。主著に『ミクロ経済学入門』など。


日本を元気にする新・経営学教室

好評だった経営学教室の新シリーズ。新たな筆者お二人を迎えて、スタートする。国内市場は成熟化する一方、グローバル化は急速に進展し、新興国の勃興も著しい。もはや、自ら新たな目標を設定し、ビジネスモデルを構築しなくてはいけない時代に突入している。日本企業に漂う閉塞感を突破するには、何がキーとなるのか。著名ビジネススクールの気鋭の教授陣が、リレー形式で問題の所在を指摘し、変革のヒントを提起する。

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