グローバルリーダーの育成をテーマに、「創造」と「共生」の観点から、連載してきたが、今回は、「共生」の視点からサステナビリティ経営を牽引するリーダー育成の意義について、解説する。企業経営は成長を目指して行われるが、この成長も地球環境のサステナビリティを棄損しては持続可能とならない。しかし、環境を守るだけでは積極的な企業経営は実現できない。ここに戦略的な思考の転換が必要になる。

サステナビリティの
2つの意味

グローバルリーダー育成への挑戦(3)<br />共生社会へ道拓くサステナビリティ経営<br />実現のための経営トップ、ツール、人材教育國部克彦(こくぶ かつひこ)/神戸大学大学院経営学研究科教授。1990年大阪市立大学大学院後期博士課程修了。博士(経営学)。大阪市立大学助教授を経て、1995年神戸大学経営学部助教授、2001年同教授(現在に至る)。北京理工大学珠海学院客員教授、ISO/TC207WG8議長。日本MFCAフォーラム会長。主著に『マテリアルフローコスト会計』(日本経済新聞出版社)、『環境経営イノベーションの理論と実践』(中央経済社)など多数。

 サステナビリティとは持続可能性を意味し、自然と経済の調和をとる方向性を示すコンセプトとして世界的に共有されている。この言葉には、別々の歴史を持つ2つの意味が、織り込まれている。

 その一つは、1987年の国連ブルットランド委員会の報告書に起源をもつサステナブル・ディベロップメントという概念である。これは「持続可能な発展」もしくは「持続可能な開発」とも訳されるもので、現在の自然環境を破壊しない範囲で(維持した範囲で)経済開発を行うというコンセプトである。このサステナブル・ディベロップメントは、1992年にリオデジャネイロで開催された国連地球サミットで採択され、全世界の共通の目標となった。

 もう一つの意味は、環境、社会、経済の3つの調和のとれた発展という意味である。これは、イギリスの環境経営のオピニオン・リーダーであったジョン・エルキントンが提唱したもので、現代の企業は環境・社会・経済の調和のとれた発展を目指すべきで、それによってサステナビリティが実現されると主張した。この3側面の調和のとれた利益は、トリプル・ボトムライン(3重の利益)と呼ばれる。