寄付論議が盛り上がっている。年初の「タイガーマスク現象」に続き、NPO法人などへの寄付に対する税控除の拡充など寄付税制改革に対して、官直人首相も「内閣としても最優先で取り組んでいきたい」と明言。また、2011年度から信託銀行に預けたお金を政府認定のNPO法人などに対して計画的に寄付ができる信託商品が認められる。
寄付の気分が盛り上がり、それを後押しする法整備も進みそうだ。加えて、タイガーマスク現象では、寄付者が自分なりのスタイルで寄付をするという楽しみを社会が学んだ。というわけで、NPOなどの非営利セクターは、これで寄付が増えるのではないか。今年は「寄付元年」と呼べる年になるのではないか。という大きな期待がある。
これまで日本で寄付文化が
育たなかったワケ
そんな盛り上がりの中、寄付に関する日本最大級のイベント「ファンドレイジング・日本2011」が2月5日、6日の2日間にわたって開催された。
「ファンドレイジング」というのは、簡単に言えばNPOなどのための資金調達のことだが、いまでは社会貢献に関心のある人にとってはもはや説明不要の言葉になっている。ほんの数年前までは、日本ではほとんど知られていなかった言葉だと思えば、やはり日本の寄付文化は進化しているといえるだろう。
寄付大国のアメリカでは、ファンドレイジングを行なうファンドレイザーはちゃんとした職業として成り立っていて、2万人くらいのプロがいるという。平均年収は800万円くらいで、一流になると数千万円の報酬を得るという。このクラスになると、ヘッドハンティングの対象となり、NPO同士で引き抜き合戦になると聞く。
このようなプロが競い合い、ノウハウを共有してお互いのスキルを高めあい、寄付文化を進化させている。それがアメリカだ。翻って日本では、ファンドレイジングという概念すら数年前まではほとんど無かった。プロのファンドレイザーもほとんど育っていない。その違いが、日本の個人寄付約5500億円。アメリカの個人寄付約18兆円という寄付額の違いにつながっている。日本に寄付文化が育っていないのは、キリスト教文化との違いだとか、寄付税制が弱いからだといわれるが、実は「寄付」に関してマーケティングができていなかったのが最大の原因だと筆者は考えている。
日本ファンドレイジング協会は、そんな日本の寄付マーケットを活性化し、新たな寄付文化を創り、寄付市場を拡大することを目的に設立された。たった2年前のことである。ファンドレイジングに特化したイベントである「ファンドレイジング・日本」が初めて開催されたのも昨年2月のことである。今年で2回目。つまり、日本におけるファンドレイジングの浸透、寄付文化の創造はまだまだ始まったばかりだということだ。