街中で見かけるヤミ金のチラシ。連絡先の多くは携帯電話。正規業者は連絡先を固定電話にすることが義務づけられているため、こうしたチラシは明らかにヤミ金のものと思われる。

 中小企業が多く集まる大阪。いま、ここである異変が起きていると聞き、追跡チームは大阪府庁の商工労働部・貸金業対策課を訪ねた。貸金業者の指導監督や、借金に困っている人の相談に乗っている部署だ。「ヤミ金に手を出して借金が膨れ上がってしまった」という相談が相次いでいるという。追跡チームが訪ねた時も、職員たちは電話対応に追われていた。

 「月々だいたい7万円弱くらいお支払されておられるんですね」

「返済できないということになりましたらね…」

 別室には借金相談をまとめたファイルが山のように積まれていた。貸金業対策課の楠本成樹課長補佐が、そのファイルを開きながら個別のケースを説明してくれた。

「基本的には10月以降の相談をまとめたファイルです。この方は…、もともと新聞の販売店を経営されてて、資金繰りに窮してヤミ金に手を出したということなんですけど」

 特に多いのが、中小企業の経営者が資金を調達できず、やむなくヤミ金に手を出すというケース。中には借り入れを繰り返し、総額が1000万円以上に膨れあがったケースもあった。

中小企業の経営者7人に1人が
ヤミ金から借りようとしている実態

 昨年、貸金業対策課は、府内の貸金業者を利用したことのある中小零細事業者、およそ230人を対象に資金繰りに関するアンケートを行なった。調査で明らかになったのは、「7人に1人がヤミ金から借りている、または借入を検討している」という実態だった。楠本課長補佐は、最近の借金相談に訪れる人の傾向について、こう語った。

「ギャンブルじゃなくてまじめに生きてきた結果、ヤミ金を利用されている方ですね。一生懸命事業やってきた、その結果ヤミ金に手を出したという方が多いんです」

 一方警察庁は、昨年上半期のヤミ金融事件の被害者は前年比で4割減、被害総額は半分以下の約65億円に減ったと発表。改正貸金業法など一連のヤミ金融対策が奏功し被害が減っているとしている。それに対して楠本課長補佐は、「具体的なデータがあるわけではないがそれは現場の実感と違う」と語る。

「相談に来られた方に色々話す機会もあるんですけど、その時におっしゃるのは、なんぼでもヤミ金はあると。ヤミ金業者は相当根を張っているんだろうなと思います」

10日で2割。年利にすると700%を超える暴利を取る業者も少なくないヤミ金業界。明日の資金に困った中小企業を食い物にしている。

 なぜいま、中小企業はヤミ金に頼らざるを得ないのか。追跡チームは、ヤミ金から借りたことがあるという経営者を訪ねた。不動産会社を経営する長野さん(仮名)。急な資金繰りを迫られてヤミ金に手を出したという。

「250万円、用意して頂きました。10日で300万にして返しましたので、20%ですか。10日で2割」

 10日で2割。年利にすると700%を超える暴利だ。それでもなぜ借りなければならなかったのか。長野さんは不動産業界の資金繰りの現状を、ご自身の具体例を交えて話してくれた。