ダイヤモンド社のビジネス情報サイト
加藤嘉一「中国民主化研究」揺れる巨人は何処へ

来年度の中国経済政策について今年最後の政治会議が語ったこと

加藤嘉一
【第92回】 2016年12月20日
著者・コラム紹介バックナンバー
1
nextpage

今年の中央経済工作会議での
「核心」の一つは“穏中求進“

 12月12~14日、中央経済工作会議(以下“会議”)が北京で開催された。今年度の経済情勢・政策を振り返り、評価を与えること、および来年度のそれに向けた指針を提示することを主旨とする、2016年最後の重要な政治会議である。

 あらゆる問題提起、情勢評価、政策方案が審議されており、それらすべてをコラム一本で網羅するのは現実的ではないし、“情報量”が多すぎるが故に、分析する側の忍耐が削がれてしまうかもしれない。

 本稿では、中国共産党が「大局を死守する」という観点から危機感を抱き、故に高度に重視する、そしてその方針や政策がある程度具体的に描かれている部分を抽出しつつ、現段階で施せる若干の分析を加えていきたい。

 「穏中求進という実務の総基調は治国理政の重要な原則であり、経済実務をしっかり行うための方法論である。来年、この総基調を一貫し続けることには特別に重要な意義があるのだ」

 私から見て、この部分は会議における一つの核心である。“穏中求進”とは安定の中で進歩を求めることであり、“治国理政”とは国を治めることに加えて、国政運営を指している。これまでも“穏中求進”の四文字は経済政策を主張したり、審議したりする際にしばしば使われてきたが、今回はこれが治国理政に対しても“原則”として応用され、逆に従来修飾の対象であった経済政策に対しては“方法論”であると指摘された。

 中国国内における政府系シンクタンク研究者らの間では、穏中求進を経済政策だけでなく、政治の分野にまで広げたことを“アップグレード”だとして評価する分析が主流であるようだが、私はむしろ党指導部の現状に対する危機感の表れであると解釈した。安定を“総基調”と定義した会議は「安定とは大局であり、安定という前提の下で肝心な分野で進取すること」を掲げている。

1
nextpage
スペシャル・インフォメーションPR
クチコミ・コメント

DOL PREMIUM

PR
【デジタル変革の現場】

企業のデジタル変革
最先端レポート

先進企業が取り組むデジタル・トランスフォーメーションと、それを支えるITとは。

経営戦略最新記事» トップページを見る

最新ビジネスニュース

Reuters

注目のトピックスPR

話題の記事

加藤嘉一 

1984年生まれ。静岡県函南町出身。山梨学院大学附属高等学校卒業後、2003年、北京大学へ留学。同大学国際関係学院大学院修士課程修了。北京大学研究員、復旦大学新聞学院講座学者、慶應義塾大学SFC研究所上席所員(訪問)を経て、2012年8月に渡米。ハーバード大学フェロー(2012~2014年)、ジョンズ・ホプキンス大学高等国際問題研究大学院客員研究員(2014〜2015年)を務めたのち、現在は北京を拠点に研究・発信を続ける。米『ニューヨーク・タイムズ』中国語版コラムニスト。日本語での単著に、『中国民主化研究』『われ日本海の橋とならん』(以上、ダイヤモンド社)、『たった独りの外交録』(晶文社)、『脱・中国論』(日経BP社)などがある。

 


加藤嘉一「中国民主化研究」揺れる巨人は何処へ

21世紀最大の“謎”ともいえる中国の台頭。そして、そこに内包される民主化とは――。本連載では、私たちが陥りがちな中国の民主化に対して抱く“希望的観測”や“制度的優越感”を可能な限り排除し、「そもそも中国が民主化するとはどういうことなのか?」という根本的難題、或いは定義の部分に向き合うために、不可欠だと思われるパズルのピースを提示していく。また、中国・中国人が“いま”から“これから”へと自らを運営していくうえで向き合わざるを得ないであろうリスク、克服しなければならないであろう課題、乗り越えなければならないであろう歴史観などを検証していく。さらに、最近本格的に発足した習近平・李克強政権の行方や、中国共産党の在り方そのものにも光を当てていく。なお、本連載は中国が民主化することを前提に進められるものでもなければ、民主化へ向けたロードマップを具体的に提示するものではない。

「加藤嘉一「中国民主化研究」揺れる巨人は何処へ」

⇒バックナンバー一覧