「生産性向上」を過半数が実感。だが「収益貢献」はわずか29%

PwCコンサルティングが、売上高500億円以上の企業に所属する部長職以上の487人を対象に行った調査をまとめた「日本企業におけるB2Bセールス業務への生成AI活用実態調査2025」によると、回答者の68%が「生成AIを導入済み」と答え、調査対象の日本の大企業の3分の2以上は、すでに何らかの形で生成AIを業務に取り入れていることが分かった。

しかし、問題はその成果である。導入済み企業のうち、「生産性向上を実感している」と答えた企業は半数以上に上ったが、「収益への貢献を実感している」との回答は、わずか29%にとどまったのだ。

多くの企業では現在の生成AIから業務効率化の恩恵は受けているものの、トップライン(売上高)を押し上げるという本来の目的には到達していないのが実態だ。

生成AIは、その導入自体がゴールではない。生成AIを組織として「どう活用し、何につなげるか」を考えていくことが重要である。次の段落で詳しく見ていく。  

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活用度の高い企業ほど「売り上げ・収益」への効果を実感

PwCコンサルティングは今回の調査で、回答者をAI活用の成熟度に応じて4つのセグメントに分類している。

High(全体の14%):主要業務で広く活用
Middle(同20%):複数業務で部分的に活用
Low(同34%):一部業務で活用
Zero(同32%):未導入

【PwCレポート】AI導入企業の7割が「収益への貢献」を実感できていない。B2B営業で成果を出す企業は何が違うのか?調査が示す3つの提言出所:日本企業におけるB2Bセールス 業務への生成AI活用実態調査2025
AI導入済み企業は全体の68%で、AI活用の度合いに基づき3段階のセグメント(High/Middle/Low)に区分される
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興味深いのは、成熟度が高いHighセグメントほど「売上高や収益への効果」を実感しているのに対し、成熟度の低いLowセグメントでは「生産性向上の効果」を実感するとの答えが相対的に多かったことだ。

この結果は、AIの活用度を高めることが、単なる効率化にとどまらず、トップライン向上に結び付く可能性を示唆している。

【PwCレポート】AI導入企業の7割が「収益への貢献」を実感できていない。B2B営業で成果を出す企業は何が違うのか?調査が示す3つの提言出所:日本企業におけるB2Bセールス 業務への生成AI活用実態調査2025
AI活用度別で見ると、Highセグメントでは全指標で効果実感が高く、特に社員生産性は82%が効果を実感している
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ではなぜ、AI導入が事業成果につながる企業と、ただの効率化ツールで終わる企業に分かれるのか。そのヒントは「AI推進の成功要因と阻害要因」にある。

計画通りに進まない企業の阻害要因を見ると、Lowセグメントにおいては「AI活用人材のスキルと育成体制」が1位であり、さらに「既存業務への組み込み(ユースケースの確立)」や「自社に最適なツールの選定と連携」が上位に挙がっている。

要するに、「何に使うか」「誰が使うか」「どう使うか」の具体化が壁となり、入り口の段階でつまずいている企業が多いことを、今回の調査は示している。

一方、Highセグメントの成功要因は極めて示唆に富んでいる。

セグメント共通の1位である「AI活用人材のスキルと育成体制」に加え、Highセグメントでは「セキュリティ・ガバナンス体制の構築」「費用対効果(ROI)の明確化と予算管理」「自社保有データの整備・統合」が高い割合で選ばれている。

この結果が意味するのは、AI活用の成否は「現場の個人の努力」に依存するものではなく、「組織的な仕組み作り」に懸かっているという事実だ。

経営層がROIを明確にし、セキュアな環境と良質な自社データを用意した上で、人材を育成する体制を整える。組織・人材・データ・統制を含めた「総合的な体制構築」を実現した企業だけが、AI投資を事業成果に結び付けている。

【PwCレポート】AI導入企業の7割が「収益への貢献」を実感できていない。B2B営業で成果を出す企業は何が違うのか?調査が示す3つの提言出所:日本企業におけるB2Bセールス 業務への生成AI活用実態調査2025
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成否を分ける「AIの使い分け」

利用しているAIソリューションの種類にも、成熟度による明確な違いがある。

Highセグメントは「汎用AI」だけでなく、「特定業務特化AI」や「CRM付帯AI」を複数の業務で使い分けており、売上高や収益への効果につなげているのだ。平均利用ツール個数を見ても、Lowセグメントの0.98個に対し、Highセグメントは1.32個と高い水準にある。

また、Highセグメントの営業業務別の使用AIは、「アプローチ・初期接点」において、特定業務特化AIの利用率(47%)が汎用AI(36%)を上回っている。

【PwCレポート】AI導入企業の7割が「収益への貢献」を実感できていない。B2B営業で成果を出す企業は何が違うのか?調査が示す3つの提言出所:日本企業におけるB2Bセールス 業務への生成AI活用実態調査2025
AI活用度が上がると、汎用AI依存度がやや下がり、特化型・CRM付帯・自社開発AIへの分散が進む。Highセグメントでは人材育成領域でのAI活用も積極的
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「支援ツール」から「自律的主体」へ

AIへの期待役割においても、セグメント間の差は顕著だ。Lowセグメントでは「定型業務の自動化」「データに基づく顧客・市場分析」など支援ツールとしての役割が中心だ。

しかしHighセグメントでは「リードの自律的な発掘・初期アプローチの実行」「商談機会の創出とアポイント調整の完全自動化」「既存顧客へのアップセル/クロスセルの自律的な提案・実行」といった、AIが自ら営業活動の一端を担う“自律的主体”としての役割への期待が加わっている。

【PwCレポート】AI導入企業の7割が「収益への貢献」を実感できていない。B2B営業で成果を出す企業は何が違うのか?調査が示す3つの提言出所:日本企業におけるB2Bセールス 業務への生成AI活用実態調査2025
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一方で、人に期待する役割についてもHighセグメントは独自の視点を持つ。

Lowセグメントが「信頼関係の構築」「例外処理」など従来型の人の役割を重視するのに対し、Highセグメントでは「AIの出力(草案)に独自の知見や文脈を加えて完成させる」「AIを活用した新しい営業モデルの設計・改善」など、AIとの協働を前提とした新たな人材像が描かれている。

【PwCレポート】AI導入企業の7割が「収益への貢献」を実感できていない。B2B営業で成果を出す企業は何が違うのか?調査が示す3つの提言出所:日本企業におけるB2Bセールス 業務への生成AI活用実態調査2025
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PwCレポートから導いた、AI活用推進のための3つの提言

以上のような調査結果を踏まえ、PwCコンサルティングは、AI活用を次のステージに進めるための3つの提言を行っている。

(1)「AIありき」で業務プロセスを再設計する

既存業務にAIを部分的に組み込むのではなく、AIを前提とした営業プロセス全体の再設計が求められる。

営業プロセスの再設計は、AI活用の成熟度を問わず多くの企業に共通する課題として認識されており、今まさに着手すべきテーマである。

【PwCレポート】AI導入企業の7割が「収益への貢献」を実感できていない。B2B営業で成果を出す企業は何が違うのか?調査が示す3つの提言出所:日本企業におけるB2Bセールス 業務への生成AI活用実態調査2025
営業プロセスの再設計は全セグメント共通で高く、活用段階を問わず業務変革の必要性が認識されている。Highセグメントではさらにガバナンス体制(52%)や人材評価指標の再定義(49%)への意識が高く、AI活用の高度化に伴い制度・体制面の変革ニーズが強まる傾向が見られる
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(2) 効果測定を「生産性」から「事業成果」へ拡張する

AI活用が進んでいるHighセグメントでは、「社員生産性」にとどまらず、「売上高・収益」「顧客満足度」「ブランド力」まで幅広い指標で効果を実感している。

そのためAI活用が半ばの企業は、工数削減やコスト削減といった内向きの効率化KPIだけでなく、売上高、収益、顧客満足度、企業ブランド力向上といったトップラインや対外指標へと、AI投資の評価軸を引き上げる必要がある。

これにより、経営層の持続的なコミットメントを引き出しやすくなり、迅速に推進できる意思決定体制の構築へとつながる。

(3)AI人材の育成とスキル変革を組織的に推進する

現場の「一部のAIに詳しい社員」への丸投げでは変革を進めることは困難である。CoE(Center of Excellence)体制の構築など、業務に取り入れやすい仕組みを組織として確立し、営業担当者だけでなく、AIの構築・運用者やセキュリティー担当者も含めた新しい「人材ポートフォリオ」を再定義することが不可欠だ。

専門家が考える今後の展望―PwCが描く「今後1~2年」のシナリオとは

最後に、PwCコンサルティング パートナーの平野恵理子氏のメッセージをお届けする。

営業領域における生成AI/AIエージェントの活用は、この2年ほどで急速に広がりを見せています。

PwCが支援するクライアントにおいても、パイロット導入や本格構築フェーズに着手する企業が顕著に増加しており、今回の調査結果は私たちの現場での実感とも合致するものでした。

現在、多くの企業がまず取り組んでいるのは、営業担当者の業務支援を目的とした生成AI/AIエージェントの導入です。

具体的には、業界動向や過去の商談情報の収集・要約といった提案準備の効率化、さらには商談情報の更新や報告書の自動生成など、営業活動前後の業務を担う生成AI/AIエージェントの導入が進んでおり、準備・事後フォローに要する時間の大幅な短縮を実現するケースも生まれています。

今後1〜2年では、こうした営業担当者支援領域でのAI活用が業界・企業規模を問わず幅広く浸透していくことに加え、プロンプト設計やRAG(検索拡張生成)の活用で経験を積んだ先進企業が、顧客応対の無人化といったより高度なユースケースに本格的に取り組んでいくものと考えています。

AIの役割が営業の「支援者」から「主体的な実行者」へと進化する流れの中で、営業モデルの抜本的な変革や、人手に依存しないトップライン向上が現実味を帯びてくると捉えています。

同時に、AIに求める回答精度向上を実現する上では、生成AI/AIエージェントの設計のみならず、AIが活用可能な形でデータが十分に蓄積されていることが重要な成功要因となります。

例えば、音声の自動記録・要約技術などを活用し、日々の営業活動から生まれるデータを体系的にストックする仕組みの構築や、データの定義・意味を社内で統一していくことが、AI活用の成果を大きく左右するものと考えます。

ユースケースの選定と並行して、データ基盤の整備に早期から着手することが不可欠である——これは日々の支援を通じて私たちが改めて強く実感しているところです。

Profile
PwCコンサルティング合同会社 パートナー
平野 恵理子

変革構想策定、業務改革、組織改革、人材育成、IT戦略立案、チェンジマネジメント支援などを多く経験。
現在は、フロント領域(特にB2B営業/マーケティング)の変革実現を主領域として、構想策定からシステム構築支援まで幅広いフェーズで活動。

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