証券業界で重視される決算情報の一つを、大和証券が2010年度第3四半期から密かに変更し、“水増し”とも取れる数値を開示していることがわかった。

 この指標は「資産純増額」。投資家が株式や投資信託などを購入した資産導入額から、現金に換金した流出額を差し引いたものだ。この資産純増額が増加すれば、証券会社にとって収益増につながることから大和も重視、第3四半期は729億円の純増という好結果となった。

 ところがである。この数字、これまでの算定基準で算出すれば、「100億円程度にしかならない」(大和関係者)というのだ。

 大和側によれば、第3四半期決算から、「毎月分配型の投資信託の分配金を算入している」という。つまりこの分配金で、600億円強もの“下駄”を履かせたわけだ。

 その理由について大和側は本誌取材に対し、「他社も算入して開示しているため」と説明。だが、少なくとも証券大手2社、野村證券と日興コーディアル証券は、「含めていない」と明確に否定する。

 それもそのはずで、分配金は「銀行預金などに換金して貯めておく投資家が多く、再投資に回すケースはまれ」(証券関係者)。つまり、資産純増額を計算するうえでは、むしろマイナス計上すべき項目なのだ。仮に再投資されたとしても入出金は差し引きゼロで、新たに預かった資産とはいえない。

 にもかかわらず大和が分配金を算入した背景には、自身の苦境が見え隠れする。最大手・野村は大型IPOや法人分を除いても資産純増額は6000億円程度(関係者)と、じつに10倍もの差が開いているのだ。

 そのため今回、「見劣りしないよう、苦しまぎれに加算した」(大和関係者)と見られるが、第2四半期もマイナス22億円から535億円のプラスになっているなど、注記すら付さず過去の数値までもすべて書き換えている。だが本来なら、明確な説明があってしかるべきではないか。

(「週刊ダイヤモンド」編集部 池田光史)

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