配当狙い投資で最も大切なことは、「利益剰余金」をチェックすること――。こう強調するのは、冒頭でも登場した亜細亜大学名誉教授の碓氷悟史さんだ。

 利益剰余金とは、企業が稼いだ利益のうち内部に蓄積した金額のこと。これが多いのは、これまで安定して多くの利益を稼ぎ続けたことの結果であり、収益基盤が強いことの証だ。また、利益剰余金は配当の原資にできる資金でもある。

◆「利益剰余金」を見れば企業の強さがわかる

 では、利益剰余金がどのくらい蓄えられていればいいのか。

 「配当可能年数が10年以上、長期収益力50%以上の水準なら収益基盤が強く、かなり優秀な企業と言える」(碓氷さん)

 配当可能年数とは、利益剰余金で何年分の配当が支払えるか計算したもの。1株当たりの利益剰余金を求めて、配当金額で割れば計算できる。

 一方、長期収益力とは、利益剰余金が資産のどのくらいを占めているかを計算した率だ。碓氷さんの研究によると、「50%以上なら、無借金経営ないしそれに近い安定した経営が可能になる」という。

 利益剰余金に関連したこの2つの条件に加えて、配当利回りの高さ(4%以上)、本業の収益力の強さ(営業利益率10%以上)、株価の割安さ(PBR1倍以下)という条件を加えた5条件が、碓氷さんオススメの配当狙い銘柄の選別条件だ。

 この5条件を満たしていれば、「長期にわたり安定して高配当を受けられる可能性が高い」(碓氷さん)という。具体的には、以下に紹介する8銘柄が碓氷さんのメガネにかなった銘柄だ。

★碓氷先生オススメの高配当を継続できる銘柄の選び方!

条件(1) 予想配当利回り4%以上
「予想配当額÷株価」で計算した利回り。「10年物国債利回り以上」が碓氷さんの基準だが、現状では高利回り銘柄が多いため基準を高めにしている。

条件(2) 売上高営業利益率9%以上
売上高営業利益率は「営業利益÷売上高」で計算し本業の収益性の高さを見る指標。過去3年と今期予想に関して、コンスタントに9%以上なら合格。

条件(3) 低PBR 1倍以下は超割安
PBRは「1株純資産÷株価」で計算し、資産面から見た割安さを計る。一般的に「財務、収益面に問題ないのに1倍以下なら割安」とされる。

条件(4) 配当可能年数が10年以上
配当は、過去の利益を積み立てた利益剰余金からも支払うことができる。10年分以上の配当を賄えるだけの利益剰余金があれば、配当支払い能力は高いと言える。

条件(5) 長期収益力が50%以上
長期収益率が高いほど、これまで長期にわたり多くの利益を挙げ続けてきたと言える。また、この指標が50%以上なら、実質無借金に近い経営が可能になるという。

★高配当を続けられるキャッシュリッチ企業8

(1)シーボン(JQ/4926/100株単位)
→予想配当利回り 5.13%

◎4期増益、配当可能年数20年
スキンケアなど基礎化粧品の製造・販売。リピーター中心に着実に利益を伸ばし、4期連続営業増益予想。100株以上の株主に1万5000円相当の株主優待あり。100株保有の場合、「配当+優待」利回りは13%に。


(2)朝日ネット(東1/3834/1000株単位)
→予想配当利回り 4.43%

◎5期連続の増収増益で収益力も強い
インターネット接続業の老舗。5期連続の増収増益、営業利益率もコンスタントに20%以上をキープするなど収益基盤はかなり固い。自己資本比率85%、長期収益力72%と財務の内容も磐石だ。


(3)小野薬品(大1/4528/100株単位)
→予想配当利回り 4.75%

◎長期収益力は100%以上
ここ数年、後発薬の攻勢などで収益状況は苦戦しているものの、最近はがん化学療法に伴う悪心、嘔吐を抑えるイメンドの売上げが想定以上に好調。今期の配当性向(利益のうち配当に回す率)はほぼ100%になる見通し。


残りの5銘柄は次ページで紹介
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