前座、二ツ目、真打、ご臨終──。落語家に定年はない。生涯現役の高齢者比率が高まっており、いよいよ、昇格システムに歪みが見え始めている。落語家稼業の厳しい実態に迫った。(週刊ダイヤモンド2016年7月9日号特集「落語にハマる!」より)

 かつては不景気になるたびに、入門者が殺到していた落語家。今では、落語好きがファンでいることにとどまらず、「好きなことを職業に」と考える若手が増えた。

 その結果、落語家数は約800人にまで増えた。江戸時代以降で過去最多の人数である。

 入門者の激増は、「真打昇進制度」と呼ばれる昇格システムに歪みを来し始めている(上方落語協会は除く)。落語家は入門すると、まずは真打を目指す。通常は、入門から真打になるまで13~16年かかるが、よっぽどの失態を犯さない限り、エスカレーター式に上がっていく仕組みだ。

 まれに、所属協会と席亭(寄席のオーナー)の信任があれば、異例の抜てき人事が発動される。最近では、春風亭一之輔が7年で真打に昇進したのが記憶に新しい。

 落語界では、真打になれば一人前。弟子がいてもいなくても、「師匠」と呼ばれるようになる。だが、真打になればバラ色の人生が待っているかといえばそうではない。

 現在、東京の落語家数は545人なのだが、そのうち真打は352人。全体の65%が真打=師匠で占められる逆ピラミッドの構成になっている(次ページ図参照)。まさしく“真打バブル”である。