経営 X 人事
中原淳の学びは現場にあり!
【第10回】 2015年8月18日
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中原 淳 [東京大学大学総合教育研究センター准教授],井上佐保子

「弟子は師匠なり」教えることで学ぶ落語家の日常
検証現場⇒落語家・柳家花緑さん

柳家花緑さんは、落語界をリードする若手実力派のひとり。落語の公演で全国各地を飛び回りつつ、テレビや舞台などでも幅広く活躍し人気を博している花緑さんは10人の弟子を持つ師匠でもあります。そんな花緑さんに落語の学び方、そして落語の教え方についてお話を伺いました。 [写真]=橘 蓮二

9歳で落語を始める

 落語は江戸時代から現在に至るまで庶民に愛され庶民と共にある伝統芸です。しかし、よく考えてみると、たった1人で座布団1枚敷かれた舞台にちょこんと座り、数十分の物語を身振り手振りを交えて語ることで、観客を魅了し楽しませるというのは、かなり難易度の高い話芸です。

柳家花緑さんの高座。スピード感溢れる歯切れのよい語り口が人気だ

 落語家はいったいどのように落語を学んでいるのでしょうか。人気落語家であり、10人の弟子を抱える師匠でもあり、『落語家はなぜ噺を忘れないのか』(角川SSC新書)の著者でもある柳家花緑さんに、落語家の学びについてお話を伺いました。

 花緑さんが、同居していた祖父(落語界初の人間国宝、故・五代目柳家小さん)や叔父(六代目柳家小さん)の手ほどきを受け、落語を始めたのは9歳の時のことでした。

 「誤解のないようにしたいのですが、落語家は世襲制ではありません。私のように身内に落語家がいて二世で活動しているのは、むしろとても稀な存在なのです」。多くの落語家は、高校、大学卒業以降に、師匠の門を叩き、弟子入りするようです。

 落語は本来、師匠の噺を聞いて真似する「口伝」で伝えられてきました。しかし、祖父小さんは非常に多忙だったため、花緑さんは祖父の落語のテープを聞き、それを全てノートに書き起こし、覚えたら祖父に聞いてもらい、アドバイスを受ける、という形で稽古をしたそうです。

 「祖父の口調そっくりそのままコピーしていたので、子どもなのに年寄りっぽい話し方になっていて。若さのない子どもでした(笑)」

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中原 淳[東京大学大学総合教育研究センター准教授]

東京大学 大学総合教育研究センター准教授。著書に『職場学習論』『経営学習論』『活躍する組織人の探究』『研修開発入門』『駆け出しマネジャーの成長論』など多数。企業における人材開発の実証的研究をすすめるかたわら、さまざまな研修・ワークショップなどを開発・評価。近年では、新任マネジャー向けワークショップ「マネジメントディスカバリー」、人材開発担当者向けワークショップ「研修開発ラボ」などを開発。Blog: http://www.nakahara-lab.net/blog/、Twitter ID: nakaharajun

 

 

井上佐保子(いのうえ・さおこ)

1972年東京都生まれ。慶應義塾大学文学部卒。通信社、出版社勤務を経て、2006年にフリーランスライターとして独立。企業の人材育成、人材マネジメント、キャリアなどをテーマとして、企業事例、インタビュー記事などを執筆。人事・人材育成分野の書籍ライティングも手がけている。


中原淳の学びは現場にあり!

このコーナーでは、毎回、“学びに満ちた仕事の現場”を訪問し、WorkplaceLearning(職場の学び)の観点から、検証していきます。日頃はあまり目にすることのないさまざまな職種の「現場」。そこでは、どのような仕事がなされ、人はどのようにして知識やスキルを学び、育っているのでしょうか。企業の人材育成では見落とされがちな「学びのスイッチ」を掘り当てます。

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