人によって定義が異なる「景気」
筆者が重視する指標とは

2016年のアベノミクスは70点、GDPが今一歩だphoto:首相官邸HPより

 筆者は、しばしば一般の人と経済の話をするが、これがなかなか面白い。

 先日も、ある人から「景気」が悪いので、なんとかしてほしいという話を聞いた。

 実のところ、景気という言葉は一癖あると思っている。「景気」という言葉は、鴨長明の『方丈記』に出てくるが、「空気の景色」を意味するとされている。いってみれば、雰囲気という感じだ。だから、誰もが「景気」と言っているが、その意味はその人のイメージによってまちまちだ。

 英語では日本語の「景気」に相当するしっくりくる言葉がない。「business」や「economy」などが適宜使われている。

 冒頭の人の「景気」は、businessの意味だったようだが、子細にその人のビジネス(商売)の状況を聞くと、それほど悪くない。そこで改めて尋ねると、どうも業界を取り巻く「雰囲気」だった。よく、景気は気からといわれるが、まさにこの「雰囲気」としての「景気」が悪いといっていたようだ。

 筆者の本職は「経済」ではなく。「数量分析」である。たまたま対象として「経済」は多いが、対象は「政治・選挙」から「国際政治・戦争」まで広範囲になっている。

「景気」についても、「雰囲気」という漠然としたイメージではなく、主として二つの経済指標で考えている。そうでないと、何を話しているのかわからなくなってしまうからだ。

 筆者はもともと数学出身なので、言葉を定義しないと気が済まない。言葉・概念の「定義」が真っ先にあり、その後に、主要主張である「定理」、その後に「証明」というのが数学のスタイルだ。文系の人は、言葉を定義せずに自分のイメージで語る人が多くて難渋している。文系の人のある本を読んだら、言葉の定義がまったくなく、最後に、本の結論として言葉の定義が出てくるのはびっくりしたことがある。一体何を書きたかったのか(笑)。