会計上負担になる
債務性がないのは明らか
筆者は4週間前に本コラムで「日銀当座預金を民間銀行の「預金」と勘違いする人々へ」を書いた。田中秀明・明治大教授がそれに反論した「埋蔵金と日銀の国債購入で日本の借金は消えるのか?高橋洋一教授に反論!」というので、今回はその再反論と思っていた。
ところが、ネットで探してみると、「民間銀行の日銀当座預金残高の本質~日銀の保有国債は政府の負債と相殺して見ることができるか?~」で、竹中正治氏が、田中氏と筆者の論考を比較し、筆者の主張が妥当であるとしている。
論争の本質部分は、これでおしまいである。
当然だろう、日銀当座預金に統合政府の会計上、債務性があるはずがない。これは、単純な思考実験でもわかる。今の日銀による金融緩和ではなく、政府紙幣の発行による金融緩和を考えてみればいい。日銀当座預金は、政府紙幣(これは日銀券と同じ)に置き換わるわけであるので、会計上負担になるような債務性がないのは、明らかだろう。
経済学者はすこぶる会計に弱い。連結BSとかいうと、さっぱりお手上げの学者が多いが、この程度は簿記レベルの話である。
統合政府のバランスシートで考えるというのは、日銀が購入した有償還・有利子の国債が、無償還・無利子のマネタリーベースと置き換えられることを意味する。このため、統合政府のバランスシートの負債は、負債側は国債等950兆円、日銀券100兆円、日銀当座預金300兆円となるが、マネタリーベースの400兆円は実質的に負債から除いて考えてもいい。
これは、中央銀行という発券銀行たるゆえんである。実務的に見ても、日銀が購入した国債の利払費は政府が払っても日銀納付金で返ってくるし、償還費も日銀乗り換え(日銀引き受け)で不要である。