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日本を元気にする新・経営学教室

ビジネス界は「体験知」至上主義
「学習知」を併用して難題を解決する道を示す
神戸大学大学院経営学研究科教授 加登 豊

内田和成 [早稲田大学大学院商学研究科教授],加登 豊 [神戸大学大学院経営学研究科教授],成生達彦 [京都大学大学院経営管理研究部教授],髙木晴夫
【第6回】 2011年3月7日
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 日本企業における人材育成の三種の神器は「異動」、「OJT」、そして「教育・研修」である。これらに各自による「自己研鑽」が加わる。前二者は、経験を積み重ねるなかから実践を通じての「体験知」を獲得することを目指すのに対して、後者の「教育・研修」と「自己研鑽」は、実践の場からある程度距離をおき、実践に活かせる知識や問題解決方法といった学習知の獲得を志向するものである。

スポーツやゲームの世界では
体験知と学習知を上手に組み合わせている

 どちらか一方だけの知識で十分かといえば、そうではないと多くの人は答えるだろう。しかし、現実には、わが国だけに限らずビジネスの世界では体験知至上主義とまではいわないが、体験知の重要性が強調される傾向が強い。その結果として、読書や教育・研修に代表されるOff the job trainingを通じての学習知が、相対的に軽んぜられているように思われる。

 しかし、ビジネス以外の世界では、体験知と学習知を上手に組み合わせて活用できる者が、高い業績をあげているように思われる。

 ダンプカー一杯のボールを打つだけでは、上手なゴルファーにはなれない。考えながら練習し、練習の結果を見てさらに練習をする。そのときには、上手な人を観察することによってヒントを得たり(これは、OJTの典型例である)、著名な教則本を読んで得た学習知も活用される。不思議なことは、仕事では経験至上主義で高い成果を上げているビジネスパーソンが、ゴルフ上達のためには学習知もあわせて活用している事実である。

 囲碁でも対局を通じての体験知は、対局後の検討を通じて知識の一般化が図られるし、多数の棋力を高める努力が行われる。特定局面での最善手のセットである定石や、石の生き死にを的確に判断できる能力を涵養するための詰碁の学習も大切である。英語では、定石をセオリーと翻訳する。つまり、対局という実践のためには、定石という理論に基づく知識が不可欠なのである。

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内田和成(うちだ かずなり) [早稲田大学大学院商学研究科教授]

東京大学工学部卒、慶應義塾大学経営学修士(MBA)。日本航空を経て、1985年ボストンコンサルティンググループ(BCG)入社。2000年6月から04年12月まで日本代表。09年12月までシニア・アドバイザーを務める。BCG時代はハイテク・情報通信業界、自動車業界幅広い業界で、全社戦略、マーケティング戦略など多岐にわたる分野のコンサルティングを行う。06年4月、早稲田大学院商学研究科教授(現職)。07年4月より早稲田大学ビジネススクール教授。『論点思考』(東洋経済新報社)、『異業種競争戦略』(日本経済新聞出版社)、『スパークする思考』(角川書店)、『仮説思考』(東洋経済新報社)など著書多数。ブログ:「内田和成のビジネスマインド

 

加登 豊(かと ゆたか) [神戸大学大学院経営学研究科教授]

1953年生れ。78年3月神戸大学大学院経営学研究科博士課程前期課程修了、86年4月大阪府立大学経済学部助教授、94年1月神戸大学経営学部教授、99年4月神戸大学大学院経営学研究科教授、2008年4月~10年3月経営学研究科長・経営学部長。『インサイト管理会計』『インサイト原価計算』『ケースブック コストマネジメント』『管理会計入門』など著書多数。

成生達彦(なりう たつひこ) [京都大学大学院経営管理研究部教授]

1952年生まれ。78年横浜国立大学大学院経済学研究科修士課程卒業、81年京都大学大学院経済学研究科博士後期課程修学、89年米国ノ-スカロライナ州立大学大学院卒業(Ph.D.)、81年南山大学経営学部に就職、94年に教授、同年京都大学博士(経済学)、98年京都大学大学院経済学研究科教授、2006年京都大学大学院経営管理研究部教授、2008年~09年京都大学大学院経営管理研究部研究部長。主著に『ミクロ経済学入門』など。


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好評だった経営学教室の新シリーズ。新たな筆者お二人を迎えて、スタートする。国内市場は成熟化する一方、グローバル化は急速に進展し、新興国の勃興も著しい。もはや、自ら新たな目標を設定し、ビジネスモデルを構築しなくてはいけない時代に突入している。日本企業に漂う閉塞感を突破するには、何がキーとなるのか。著名ビジネススクールの気鋭の教授陣が、リレー形式で問題の所在を指摘し、変革のヒントを提起する。

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