ダイヤモンド社のビジネス情報サイト
週末はこれを読め! from HONZ

誘拐から密入国斡旋へ「悪のビジネス」が進化した理由

『人質の経済学』

内藤 順 [HONZ]
【第31回】 2017年1月13日
著者・コラム紹介バックナンバー
1
nextpage
(写真はイメージです)

密入国を斡旋する業者たちの原資は
外国人の誘拐ビジネスで稼いだ身代金

 テクノロジーが進化し、世界中の人たちは密接につながりだした。人類には、太古からのナレッジだって十分に溜まっている。それでも世界情勢は安定せず、中東をめぐる問題は予断を許さない状況が続いている。

 とりわけ深刻なのが、大量の難民が雪崩をうったようにヨーロッパへ流入し、深刻な社会問題を引き起こす可能性が高いということだ。驚くべきことに、このヨーロッパへ流入した難民の90%が犯罪組織に頼ってやってくるという。そして密入国を斡旋する業者たちの原資が、外国人の誘拐ビジネスで稼いだ身代金であったというから話は穏やかではない。

『人質の経済学』
ロレッタ ナポリオーニ/村井 章子(訳)/池上彰(解説)
文藝春秋
308ページ
1750円(税別)

 本書『人質の経済学』は、そのデリケートさゆえにあまり報じられることのない誘拐ビジネスや人質交渉の舞台裏を起点に、グローバル化した世界経済の闇の部分を描き出した一冊だ。著者はテロ・ファイナンスを専門とする女性エコノミスト。犯罪ネットワークの全貌や歴史的な背景を知ることで、センセーショナルさだけに目を奪われていては決して見えてこない問題の本質が見えてくる。

 それが善であれ悪であれ、世界を股にかけて大きな事を成そうと思ったら、インフラを最大限に活用することが必須となる。誘拐ビジネスのときにも、そして密入国斡旋のときにも、重要なインフラとなったのが、アフリカのギニアビサウからサハラ砂漠を縦断してヨーロッパへ流れる道であった。ここは古くからタバコ、大麻など、ありとあらゆるものを密輸するうえで成功率の高いルートとして知られていた地域でもある。

 この地域にダークサイドのイノベーションが起こったのは2003年のこと。サハラ周辺で密輸していた武装グループが、ヨーロッパ人32名を誘拐した。この時ヨーロッパ各国の政府が支払った莫大な身代金の一部を元手に「イスラム・マグレブ諸国のアルカイダ(AQIM)」が設立されてしまう。

1
nextpage
スペシャル・インフォメーションPR
クチコミ・コメント

DOL PREMIUM

PR
【デジタル変革の現場】

企業のデジタル変革
最先端レポート

先進企業が取り組むデジタル・トランスフォーメーションと、それを支えるITとは。

経営戦略最新記事» トップページを見る

最新ビジネスニュース

Reuters

注目のトピックスPR

話題の記事

内藤 順 [HONZ]

HONZ編集長。1975年2月4日生まれ、茨城県水戸市出身。早稲田大学理工学部数理科学科卒業。広告会社・営業職勤務。好きなジャンルは、サイエンスもの、歴史もの、変なもの。好きな本屋は、丸善(丸の内)、東京堂書店(神田)。はまるツボは対立する二つの概念のせめぎ合い、常識の問い直し、描かれる対象と視点に掛け算のあるもの。

 


週末はこれを読め! from HONZ

読むに値する「おすすめ本」を紹介するサイト「HONZ」から、週末読書にオススメのノンフィクション本のレビューをお届けします。HONZが対象とするのは小説を除くすべての本です。サイエンス、歴史、社会、経済、医学、教育、美術、ビジネスなどあらゆる分野の著作が対象です。

「週末はこれを読め! from HONZ」

⇒バックナンバー一覧