「先日たまたまラジオで『元留学生のための生活速成クラス(生活適応速成クラス)ができる』というニュースを聞いて、思わず苦笑してしまいました。私自身も日本留学を終えて帰国したとき、こちらの生活に慣れなくてすごく苦労しましたので、『あぁ、今中国には同じように苦しんでいる人が大勢いるんだな』と思って」

 こう語るのは、中国・大連在住の李芳さん(仮名・33歳)だ。

 李さんは、日本の地方にある国立大学(文系)に4年間留学したあと、2年前に帰国したが、いまだに就職先が見つかっていない。

 日系企業など数十社に履歴書を送ってみたのだが、「年齢が高すぎる」「日本語以外に特技がない」と門前払いされてしまい、今は退職した両親のすねをかじるしかない悶々とした日々を送っている。

 暇をもてあました李さんは、地元の手芸教室に通っているが、そこで出会った看護師から「うちの病院には、米国帰りの超エリートが何人も入院しているわ。あっちで自由な生活をしてきたせいか、中国の生活習慣に戻れなくて、ついにうつ病になっちゃったのよ。いったい何のために留学したんだか……」という話を聞かされて、思わず絶句したという。

中国人留学生は約120万人へと急増
一握りのエリートのはずが「凡人」に

 改革開放以来、欧米諸国との差を埋めるために中国が優秀な学生を海外に送り出してきたのは、周知の通りだ。かつては国費留学生がほとんどで、将来の中国を背負って立つ一握りのエリートたちだった。

 だが、1990年代後半以降の経済発展で、留学は一握りのエリートたちだけのものではなくなり、幅広い層が私費で留学できるようになった。

 中国統計年鑑によると、中国から海外への留学生は98年には約1万7000人程度だったが、2002年には約12万人、08年には約120万人へと急激に増加している。