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穀物・資源高騰で「有事のドル売り」が加速
もはやドルの“金本位制復帰”しかないのか?

真壁昭夫 [信州大学教授]
【第167回】 2011年3月15日
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ドルの実効為替レートは
2年7ヵ月ぶりの低水準に

 現在のドルの価値を、物価の変動や米国の貿易額に応じて加重平均をした実効為替レートで見ると、現在は約2年7ヵ月ぶりの低水準になっている。それだけドルの価値が、ユーロや人民元など他の通貨に対して下落しているということだ。

 この背景には、地政学的リスクの高まりに伴う原油価格の上昇がある。原油価格が上昇して米国経済が減速すると、現在の低金利が続くとの見方が高まり、ドルが他通貨に対して売られやすくなるからだ。

 ただし、ドルの価値が下落しているのは、それだけの理由ではない。もっと本源的な原因がある。それは、金融分野で多額の収益を稼ぎ出してきた、米国の金融資本主義の実力が低下していることだ。リーマン・ショックをきっかけにして、米国の金融頼みの経済体制の限界が露呈しているのである。

 通貨はその国の代表であり、当該国の経済力が低下すると、長期的には通貨の価値も下落する。現在のドルの価値は、金などモノによる裏付けはなく、単に米国に対する信認によって維持されている。

 ところが、リーマンン・ショックで、米国の金融資本主義の限界が明確になった。それに加えて、中国などの新興国が高成長を続けているため、穀物や資源などモノに対する需要が増大し、それらの価値が相対的に上昇している。

 その結果、ドルの価値が下落し、実際の穀物や資源などのモノや、それらのモノを作り出す能力を持つ国の通貨が上昇している。

 重要なポイントは、今後ドルの価値下落が続くと、基軸通貨としての機能が低下することだ。ドルの基軸通貨としての機能が低下することは、単に米国だけの問題に留まらない。世界経済にも大きな影響を与えることになる。

 かつて、米国経済が世界の覇権国としての実力を誇っていたとき、世界のどこかで紛争が起きたり、経済的な問題が発生すると、為替市場でドルは買われたものだった。それを称して、“有事のドル買い”と呼んだ。

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真壁昭夫 [信州大学教授]

1953年神奈川県生まれ。一橋大学商学部卒業後、第一勧業銀行(現みずほ銀行)入行。ロンドン大学経営学部大学院卒業後、メリル・リンチ社ニューヨーク本社出向。みずほ総研主席研究員などを経て現職に。著書は「下流にならない生き方」「行動ファイナンスの実践」「はじめての金融工学」など多数。


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