ドナルド・トランプ氏が第45代アメリカ合衆国大統領に就任した。トランプ新大統領は、大統領就任式での演説で、「米国製品を買い、米労働者を雇って、米国を再び偉大な国にする」と宣言し、「アメリカ第一主義」を改めて強調した。就任式後には早速、医療保険制度改革(オバマケア)の改廃を支持する大統領令に署名した。「環太平洋経済連携協定(TPP)」からの離脱も宣言した。

 大統領選時から続く、トランプ氏の様々な「放言・暴言」だが、「大統領になれば変わる」という楽観論もあった。だが、「変わらないトランプ」に世界は戸惑うばかりである。

 この連載では、トランプ大統領の発言は素直に捉えるべきだと主張してきた。大統領の「孤立主義」で、世界の「ブロック化」の流れが加速すれば、日本は極東の一小国の座に没落する。楽観論は無意味だ。最悪の状況を想定してどうすべきかを考えるしかないのだ(第145回)。従って今回は、トランプ大統領の一挙手一投足に右往左往する議論から少し距離を置いて、「ブロック化」の核となると考えられる。米国、英国、ロシア、ドイツ、中国の5ヵ国の関係から、中長期的に「新しい世界」がどうなるか、そして日本はどうすべきかを考えてみたい。

日本企業は英国から撤退すべきではない
離脱交渉でEUは「泥船」だと露見する

 トランプ大統領就任直前の1月17日、英国ではテリーザ・メイ首相が、欧州連合(EU)からの離脱(ブレグジット)に向けた計画について初めて説明し、域内でのモノとサービスと人の自由な移動を保証するEUの単一市場から離脱する「ハードブレグジット(強硬な離脱)」の方針を表明した。英国の目標は「移民政策や立法に関する主導権を取り戻すことにある」と言明し、「英国との懲罰的な協定を模索すべきではない。それは自らを害する破壊的な行為だ」と、EUを強く牽制した。

 メイ首相の「ハードブレグジット」宣言には、日本企業を含む外資系外国企業・金融機関に動揺が広がっている。だが、百戦錬磨の交渉上手である英国(第103回)が、最初からハードルを下げてEUとの交渉に臨むわけがない。想定の範囲内だ。

 筆者は、日本企業は英国から撤退すべきだと考えない。英国とEUが離脱交渉に入り、1~2年が経過すれば、次第にEUが「泥船」であることがわかってくるからだ。今、日本企業が英国からの撤退を決めてしまったら、後悔することになる。