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事態の深刻さを理解できない米国民がオバマ改革の成功を阻む

真壁昭夫 [信州大学教授]
【第64回】 2009年2月10日
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 最近の米国の情勢を見ていると、米国の有力商社に勤務していた友人の言葉を思い出す。

 「米国は、いまだ“バブルの酔い”から醒めていない。米国が本当に思い知るまで、まともな状態に戻らない」

 彼の言葉は、米国経済が抱える問題の一面を的確に表している。

 彼が指摘したのは、多額の公的資金の注入を要請するため、自家用ジェット機でワシントンに行った自動車大手ビッグスリーの首脳陣の態度だ。米国に多額の損失を発生させ、政府の支援がなければ資金繰りさえ立たない企業の首脳陣が、自家用ジェットで議会へ公的資金の要請に行くスタンスは、どう考えてもおかしい。

 それは、バブルに慣れきった米国企業の経営者が、いまだ“バブルの酔い”から醒めていないことを物語っている。

醒めぬ“バブルの酔い”を助長する
ブッシュ前大統領の“負の遺産”

 もう1つ、米国経済が抱える問題は、ブッシュ政権の“負の遺産”だ。具体的には、ブッシュ政権の「パッチワーク=つぎはぎ」の場当たり的政策を意味する。この「つぎはぎの政策」は、いずれかの段階で整理して、説得力を持つ一貫した政策に整理することが必要になる。

 ブッシュ政権は、金融機関が抱える不良資産を買い取るために金融安定化法案を作り、7000億ドルの資金枠を用意した。ところが、実際には、大手金融機関の経営悪化の速度は予想をはるかに上回り、資本注入を行わなければ、すぐにでも破綻する状況に追い込まれた。

 その結果、資金枠は金融機関の資本注入に使われた。さらに、経営危機に瀕したGM、クライスラーなど自動車メーカーへの資金注入にも使うことを余儀なくされた。まさに“パッチワーク”だ。

 オバマ新大統領は、これらの問題を解決して米国経済の建て直しを行なわなければならないが、それは口で言うほど容易なことではない。少しずつ、経済を“バブルの酔い”から醒まし、政策を整理して、人々が納得するような体系にまとめ直さなければならない。そのためには、「時間がかかる」ことだけは間違いない。

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真壁昭夫 [信州大学教授]

1953年神奈川県生まれ。一橋大学商学部卒業後、第一勧業銀行(現みずほ銀行)入行。ロンドン大学経営学部大学院卒業後、メリル・リンチ社ニューヨーク本社出向。みずほ総研主席研究員などを経て現職に。著書は「下流にならない生き方」「行動ファイナンスの実践」「はじめての金融工学」など多数。


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