カジノ誘致への反対はTDLの
良さが伝わらなかったのと同じ
昨年12月、足かけ4年かけたカジノ法案がようやく国会で可決された。与党の中からは公明党が反対に回り、ぎくしゃくした形での法案通過だった。
法案に前向きな安倍首相はこの間、周囲に「なぜこの良さがわからないんだ」とぼやいていたそうだ。カジノ法案が想定する、カジノを含む統合型リゾートは、アベノミクスの景気浮揚策としては即効性のある打ち手なのだが、それがなかなか国民には伝わらない。
特に公明党や野党である民進党の足元から、「ギャンブル依存症が増加する」「反社会勢力の資金源になる」などと反対論が巻き起こり、議論は紛糾した。
このコラムでは安倍首相の立場に立ってみて、なぜカジノの良さが有権者に伝わらないのかを論じてみよう。その場合に、非常によく似た昔話がある。1980年頃の日本に戻って考えると、ディズニーランドの良さは誰にも伝わらなかった。
当時、私はまだ学生だったが、浦安にディズニーランドがやってくると聞いて、「そんな子ども騙しの遊園地に莫大なお金をかけるなんて、どうかしている」と思ったものだ。これは私だけの体験ではなく、周囲の若者はだいたい同じ意見だったことを記憶している。そう考える理由は簡単で、誰も本場のディズニーリゾートを見たことがなかったからだ。
「見たことがあるのはドリームランドやよみうりランドだけ」という人たちが遊園地について語れば、当然のように「なぜ三井不動産のような大会社が大枚をはたいてディズニーを誘致するのか、意味がわからない」という意見が出てくる。
有識者が考えるカジノ構想は、基本的にはディズニーリゾートやユニバーサルスタジオの誘致と同じだ。カジノリゾートの開発は日本企業が自前で行えるものではない。だからカジノ法案が目指す統合リゾート開発とは、サンズやMGMグランドといったグローバルなカジノリゾートの運営会社を日本に誘致するプロジェクトなのだ。
内情を知っている人はよく知っていることなのだが、カジノリゾートは極めて高度なノウハウが複合したリゾート施設で、ギャンブルだけではなくエンタテインメントの運営ノウハウを統合して保持した上で、ホテル、ショッピングモール、飲食施設までに至るノウハウがないと、経営はおぼつかない。