日本が大震災で大混乱している間に、北アフリカではリビア情勢が厳しさを増している。北アフリカ・中東の社会不安・政情不安の背景には、穀物価格の急騰があるといわれている。これからも穀物価格の上昇は続くのか、その世界経済に与える影響やいかに。日本総研調査部長・チーフエコノミストの藤井英彦氏に聞いた。(聞き手/ダイヤモンド・オンライン客員論説委員 原 英次郎)

ふじい・ひでひこ/研究・専門分野は内外マクロ経済、新産業動向、金融、税財政、成長戦略など経済政策一般。1983年03月東京大学法学部卒、83年4月住友銀行入行、90年8月日本総合研究所調査部、2000年7月同IT政策研究センター所長、04年2月 同経済・社会政策研究センター所長、05年4月同ビジネス戦略研究センター所長、07年8月同調査部長/チーフエコノミスト、現在に至る。

――今回の日本の大震災が、穀物市場、食糧価格にどのような影響を与えると予想されますか。

 影響を与えるのではなく、受けることが心配だ。現下の食糧価格上昇は、国際的な需給逼迫に起因する。とりわけ、わが国は自給率が低いだけに、需給逼迫の影響を受けやすい。このところの買いだめの動きは、食糧調達を難しくする方向に作用する懸念が大きい。不足する灯油やガソリン、医薬品を含め、安定供給が直面する最大のポイントだ。

――そもそも昨年の6月頃から上がり始めた穀物価格が、上げ足を速めています。トウモロコシや小麦の国際価格は、昨年6月と比べて2倍前後にまで上がっている。FAO(国連食糧農業機関)の食料価格指数も史上最高値に達しています。なぜ穀物価格が上昇しているのでしょうか。

 穀物価格上昇の要因はいくつかあるが、ベースとしては需給のひっ迫がある。米国食糧庁の予測では、毎回生産量が下方修正される一方で、消費量はそれほど変わらないので、在庫がどんどん減っている。