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クラウド会計を使いこなす方法
【第5回】 2017年2月28日
著者・コラム紹介バックナンバー
土井貴達・米津良治・河江健史

御社の顧問税理士は「この質問」に答えられるか?
~クラウド時代の適性試験~

Fintechの代表的なサービスとして、2012年頃から税理士や企業へ急激に普及し始めた「クラウド会計」。

一般的に、クラウド会計のメリットは、「業務効率が格段に上がる」「資金繰りをタイムリーに共有することで経営分析や資金調達に役立つ」「社会保険料率や税制改正に自動対応するため業務効率が上がる」「資金繰りの不安が一掃されて、“数字に強い社長”になれる」といったものが挙げられる。

とはいえ、「本当に自分の会社に役立つのかわからないから、まだ導入しない」というケースも多い。そこで本連載では、書籍『会計事務所と会社の経理がクラウド会計を使いこなす本』の内容を元に、100社以上にクラウド会計を導入してきた税理士と会計士が、具体的なメリットや導入法・活用法を解説していく。

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記帳などの経理業務がクラウド会計によって劇的に軽減できるようになり、「クラウド会計に強いかどうかが、今後の税理士選びのキモになる」と言われる時代になりました。

そこで、現在の顧問税理士の先生が「クラウド会計にどの程度意識が向いているか?」を知るために、次の基本的な事柄について、質問を投げかけてみてはいかがでしょうか。

【Q1】クラウド会計を使うと、記帳業務にかかる時間がどの程度減るんですか?

 

【Q2】クラウド会計を使うと、どんな経費が削減できるんですか?

 

【Q3】クラウド会計を使うと、前月の試算表は翌月のいつ頃できますか?

【Q4】クラウド会計は、税理士にとってどんなメリットがあるのですか?

【Q5】クラウド会計って、セキュリティ面に不安はないのですか?

【Q6】なぜ、クラウド会計の導入に消極的なのですか?
(顧問税理士が導入に消極的である場合)

もし、これらの質問に答えられない顧問税理士さんは、これだけクラウド化が広まった時代にあっては、「黄色信号」と言えるかもしれません。

御社の「先生」は、大丈夫ですか?

まずは具体的なクラウド会計のメリットをお伝えし、記事の最後に、質問の「回答例」をお伝えします。

「単純作業」を減らし
付加価値の高い業務に集中できる

クラウド会計は、「データの自動取得機能」や「仕訳の学習機能」によって記帳代行業務に費やす時間を削減できることが、最大のメリットです。

会計事務所の作業時間のうち、記帳代行業務に費やす時間は相当なものですが、クラウド会計を利用すると、記帳業務時間を5割程度は削減できるでしょう。

会計事務所が対応できるクライアント数について、現在は職員1人当たり30社が限度と言われていますが、50社は可能になるとみられます。これは、人件費を削減しつつ、売上を維持するどころか増やせることを意味します。

クラウド会計を使いこなしている会計事務所では、すでに記帳業務にかかる時間を減らして、その分、顧問報酬を値下げしたり、顧問報酬を据え置いたまま財務分析や経営改善の提案などのコンサルティングサービスを強化したりすることで顧客満足度を高めています。

このようなクラウド会計を使いこなせる会計事務所と付き合うことは、会社側にとってもメリットが大きいでしょう。

月次決算を早期化できる

税理士から試算表が提供されるのは1ヵ月後、という会社も珍しくないと思います。月次決算は、最新の経営状態を数値的に確認し、経営者として次の打ち手を決断するために重要なプロセスであるがゆえに、試算表を出すまでに1ヵ月かかっていては、迅速な経営判断はできません。

ところが、クラウド会計を活用すれば試算表の作成に要する時間が短くなり、月末の時点で当月分の試算表を作成することも不可能ではありません

クラウド会計によって、経営者にとっての会計帳簿の役割が「過去の情報を記録しておくもの」から「リアルタイムで情報を提供してくれる意思決定に有用なシステム」に変化するのです。

もちろん、銀行に対しても早期に試算表を提供できるようになるため、融資実行までの時間が短縮できるというメリットもあります。

「クラウド会計に税理士の仕事が奪われる」は本当か?

クラウド会計の導入と聞くと、「業務が機械に奪われてしまう」という危機感を持ち、無意識に遠ざけてしまう税理士もいるかもしれません。

たしかに、そういう部分は否定できないと思います。もし、記帳代行業務のみを行なっているような会計事務所があれば、単価の引き下げを余儀なくされるでしょう。

しかし、税理士に顧問を依頼している会社としては、技術革新についていけていない会計事務所との付き合いは見直すべきではないでしょうか。ライバル会社は、よりリーズナブルで付加価値の高い税務顧問サービスを、すでに受けているかもしれません。

 「業務が機械に奪われてしまう」というのは技術革新のマイナス面だけにフォーカスした偏った感想です。もし、付き合いが長く、信頼関係ができている先生がそのようにお考えだった場合、ぜひその先生と、クラウド会計が会社と会計事務所に及ぼす「プラス面」について話し合ってみてください。双方にとって、きっと価値のあるディスカッションになるはずです。

クラウド会計の知見を身につけると
税理士としての競争力が高まる

クラウド会計は、システムである以上、当然ながらある程度の「慣れ」が必要です。たとえば、小売業のレジシステムや入金自動消込システムなどの連携は、従来の会計事務所で使用しているシステムとは異なる機能が多数あるため、慣れるまでに一定の時間がかかります。

しかし、それは裏を返せば、一度システムに慣れてしまえば、クラウド会計導入時のコンサルティングやシステムの使用方法、それらを使った財務分析の方法など、顧客へ提案できるサービスの幅が広がるということでもあります。

今後、会計システムのクラウド化があらゆる企業で進み、それらと連携した勤怠や経費精算など、さまざまなクラウドサービスが登場しています。そうした時代で、クラウド会計を扱える会計事務所とそうでない事務所、どちらが顧客に選ばれるかは、言うまでもありません。

特に、これから起業する人も含めた若い経営者は、クラウド会計のメリット・デメリットはどこにあるのか、どう経営に活かしていけるのかを非常に気にしています。会社にとって最適なシステム構成を考える際、クラウド会計も含めて説明できない会計事務所は、顧客からの信頼を勝ち得ることが難しくなってくると言えるでしょう。

しかし、そうした状況は「チャンス」だと言えます。今後も、諸々の事情で、クラウド会計についての知見を得ようとしない会計事務所は一定数存在するはずです。だからこそ、今からでもクラウド会計に触れて知識と経験を高めておくだけで、業界内での競争力を高めることにつながるのです。

会計ソフトなどの設備投資額が削減できる

弥生会計などの従来の会計ソフトは、毎年最新版を購入する必要がありますが、クラウド会計を顧問先へ導入すると、会計ソフトを顧問先と会計事務所で別々に購入する費用が削減できます

アップデートが自動化され、顧問先自身でクラウド会計を導入するか会計事務所から顧問先へ有償提供することで、会計事務所での会計ソフトの費用負担は少なくなっていくでしょう。

税務申告ソフトは引き続き購入する必要がありますが、それは会計事務所である以上、現状では不可避です。今後、税務申告ソフトについてもクラウド化が進められていくとともに、低価格化が進むと見られています。

このほか、クラウド会計で資料がペーパーレス化されれば、紙ベースの資料保管量が激減し、事務所の空間的なスペースに余裕が生まれますから、家賃やコピー代などの経費削減にもつながります

【冒頭の質問の「回答例」】

冒頭の質問を顧問税理士さんに投げかけたときの「模範解答」は下記のとおりです。

【Q1】クラウド会計を使うと、記帳業務にかかる時間がどの程度減るんですか?
→A: 一般的に5割程度の削減が期待できる。クラウド会計と相性のいい会社であれば、8割程度削減できるケースもある

【Q2】クラウド会計を使うと、どんな経費が削減できるんですか?
→A:人件費、会計ソフト購入費用、ペーパーレスに伴うコピー代など

【Q3】クラウド会計を使うと、前月の試算表は翌月のいつ頃できますか?
→A:前月末の時点で会計情報が把握できるケースもある

【Q4】クラウド会計は、税理士にとってどんなメリットがあるのですか?
→A:財務分析や経営改善の提案など、付加価値の高い業務に集中できる

【Q5】クラウド会計って、セキュリティ面に不安はないのですか?
→A:セキュリティ対策は、クラウド会計ソフト提供会社の信頼性の根幹をなすもの。銀行のシステム開発に携わったメンバーを加えて、金融機関並みのセキュリティを構築している会社もあり、今のところ大きなトラブルは発生していない。

【Q6】なぜ、クラウド会計の導入に消極的なのですか?
(顧問税理士が導入に消極的である場合)
→A:御社にクラウド会計が適さない理由を具体的に説明してくれるのであれば、信頼に足る税理士でしょう。しかし、「まだ少し早い…」、「セキュリティ面が…」というあいまいな回答は、単なる食わず嫌いの可能性もあるため、要注意です

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土井貴達(どい・たかみち)

1973年生まれ。関西大学商学部卒。公認会計士・税理士。
土井公認会計士・税理士事務所代表。2012年に大手監査法人金融部を退所し、独立。
監査法人勤務時代に実施していた取引先企業への貸付金、有価証券の査定業務に係る監査、
コンサルティング業務などを通じてあらゆる業種に精通。
独立後も、企業融資のサポートを得意としている。
独立直後からクラウド会計の導入を始め、クライアント企業への導入サポートは数十社に及ぶ。
 

米津良治(よねづ・りょうじ)

1983年生まれ。上智大学法学部卒。税理士。税理士法人ファーサイト・パートナー。
上場企業にてIR職、経理職等を経て現職。
企業勤務時代に社内横断の業務プロセス改善プロジェクトの中心メンバーとして
活動したことをきっかけに、業務効率化にこだわりを持つ。
早くからクラウド会計の優位性に着目し、研究を開始。
わずか1年で30社以上のクライアントにクラウド会計を導入した実績を持つ。
 

河江健史(かわえ・けんじ)

1979年生まれ。早稲田大学商学部卒。公認会計士。河江健史会計事務所代表、FYI株式会社代表取締役。
監査法人、証券取引等監視委員会等での勤務を経て現職。
「クラウド会計は人材不足に悩む中小企業の救世主」という思いのもと、クライアントへの導入を進める。
主な共著に『リスクマネジメントとしての内部通報制度:通報窓口担当者のための実務Q&A』(税務経理協会)、
『国税庁「税務に関するコーポレートガバナンスの充実に向けた取組み」徹底対応 税務コンプライアンスの実務』(清文社)、
『インドネシアのことがマンガで3時間でわかる本』(明日香出版社)などがある。
 


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