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長内 厚のエレキの深層

東芝が原発から安易に撤退するべきでない理由

長内 厚 [早稲田大学商学学術院大学院経営管理研究科教授/早稲田大学台湾研究所研究員・同IT戦略研究所研究員/ハーバード大学GSAS客員研究員]
【第20回】 2017年2月1日
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崖っぷちの東芝が、巨額損失を生んだ原発事業を注力事業から外すという判断は、一見すると正しいかのように見える。しかし、本当にそうだろうか Photo by Takahisa Suzuki

東芝の元凶は経営であって
技術そのものではない

 東芝が崖っぷちに立たされている。家電売却、半導体分社化といった流れは、かつて世界一の航空会社と言われたパンアメリカン航空(以下、パンナム)の末路にも似ている。

 東芝が買収した子会社の収益悪化によって経営不振に陥ったように、パンナムも1980年に買収した国内線航空会社・ナショナル航空の業績不振が直接の引き金となって経営が悪化。収益性の高い路線から切り売りした結果、パンナム本体の破産にまで追い込まれた。

 もうひとつ両社が似ているのは、パンナムは当時アメリカを代表する大手航空会社、東芝は現在日本を代表する大手電機メーカーであり、どちらも「まさか倒産するはずはない。いざとなれば国が助けてくれる」と思われていたことだ。

 福島原発事故以降の情勢の変化を考えれば、昨年春に発表された経営再建策に従前と変わらない新規原発着工積極策が盛り込まれていたこと自体、見通しが甘かったと言えよう。

 経営が悪いのと技術が悪いのとでは話が異なる。東芝の経営状況がここまで悪化したのはひとえに経営が悪かっただけのことで、東芝自身が持っている技術や製品の筋は悪くない。いや、むしろ技術力の高いメーカーである。

 筆者は鴻海精密工業によるシャープの買収には肯定的な意見を述べたが、それはシャープがシャープという固まりのまま鴻海の傘下に入り、オーナーが変わっても「大阪のおもろい家電メーカー」シャープが消滅してしまうわけではなかったからであり、東芝がこのまま解体されるように切り売りされていくのは見ていて忍びない。

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長内 厚 [早稲田大学商学学術院大学院経営管理研究科教授/早稲田大学台湾研究所研究員・同IT戦略研究所研究員/ハーバード大学GSAS客員研究員]

京都大学大学院修了・博士(経済学)。1997年ソニー株式会社入社後、映像関連機器部門で商品企画、技術企画、事業本部長付商品戦略担当、ソニーユニバーシティ研究生などを歴任。その後、神戸大学経済経営研究所准教授を経て2011年より早稲田大学ビジネススクール准教授。2016年より現職。早稲田大学IT戦略研究所研究員・早稲田大学台湾研究所研究員を兼務。組織学会評議員(広報委員会担当)、ハウス食品グループ本社株式会社中央研究所顧問、(財)交流協会貿易経済部日台ビジネスアライアンス委員。(長内研究室ホームページ:www.f.waseda.jp/osanaia/

 


長内 厚のエレキの深層

グローバル競争や異業種参入が激化するなか、従来の日本型モノづくりに限界が見え始めたエレキ産業は、今まさに岐路に立たされている。同じエレキ企業であっても、ビジネスモデルの違いによって、経営面で大きな明暗が分かれるケースも見られる。日本のエレキ産業は新たな時代を生き延び、再び世界の頂点を目指すことができるのか。電機業界分析の第一人者である著者が、毎回旬のテーマを解説しながら、独自の視点から「エレキの深層」に迫る。

「長内 厚のエレキの深層」

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