安倍政権の放漫財政を正当化する「シムズ論」の胡散臭さ1月31日、参議院予算委員会本会議で、平成28年度第3次補正予算が可決され、1兆7000億円を超える赤字国債の発行が決まった Photo:首相官邸HP

 皆がトランプ大統領の一挙手一動に気を奪われている間に、わが国にとって極めて重要な2つの出来事がスルーされてしまった。

 一つは、第3次補正予算で、1兆7000億円を超える赤字国債の発行が行われたことである。補正による赤字国債の発行は、リーマンショック以来である。毎年当初予算ではそれなりの財政規律を維持しても、補正予算という隠れ蓑で、わが国の財政が骨抜きにされてきたが、今回もその道をたどっている。

 すでに28年度第2次補正予算で、前年度に出た剰余金2500億円を「21世紀型インフラ整備」などの名目で使い果たしている。「剰余金が出れば留保し、歳入不足という事態が生じたときに使う」というメカニズムを入れなければ、財政は健全化に向かわない。

 もう一つは、1月25日に公表された、内閣府の「中長期の経済財政に関する試算」(以下、財政収支試算)で、2020年度のプライマリーバランスの黒字化達成に必要な財政収支が、経済再生ケース(名目2%、実質3%)を達成したとしても、これまでの▲5.5兆円から、▲8.3兆円へと、2.8兆円も拡大したことである。

 8.3兆円というのは、消費税率換算で3%超を意味しており、わが国の財政再建の先行きを見た場合、2020年のプライマリーバランスの黒字化という政府目標がほぼ達成されないことを知らしめたといえよう。

 これに対する総理の認識は極めて甘く、1月20日の所信表明では、これまで必ず言及していた、2020年プライマリーバランスの黒字化への言及を行っていない。

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 このようなわが国財政運営を取り巻く環境に、大きな変化が生じているにもかかわらず、マスコミをはじめ世の中の反応は低調だ。