わが国を代表する企業が、次々と労働基準法違反で摘発されている。そして、20時一斉消灯など強硬手段に出る企業や団体が増えている。しかし、一斉消灯は過長労働問題の解決にはならず、むしろ逆効果である。(リブ・コンサルティング人事部長兼組織開発コンサルティング事業部長 山口 博)

有名企業や公務員にも!
「一斉消灯」ブームの不自然

 電通、三菱電機、エイベックス、関西電力、HIS、朝日新聞…毎週のごとく、わが国を代表する著名企業が、勤務管理に端を発した労働基準法違反で取り沙汰されている。「うちは大丈夫か」「次はどこか」というフレーズが、ビジネス会話のセットアップに使われるほど、経営者やビジネスパーソンのホットトピックスになっている。

長時間労働を社員に強いるのは論外だが、だからといって一斉消灯のような手段が本当に有効なのか?(写真はイメージです)

 そして、電通22時、伊藤忠商事22時、資生堂20時、東京都庁20時、大阪市19時、千葉市月1回18時30分など、オフィスの照明を一斉消灯するという強硬手段に踏み切る企業や団体が増えている。公開資料によれば、中には日本IBMのように、月曜から木曜は20時以降、金曜日は19時以降、1時間毎に消灯して、社員の帰宅を促すという荒技を繰り出した企業もある。

 私の想像だが、そして、現時点でも実施されているかどうかは不詳だが、1時間毎に蛍光灯が消灯し、そのたびに上司は「早く帰れよ~」と声をかけ、社員同士が顔を見合わせて、苦笑いする光景が思い浮かぶ。私がその場にいたらと思い浮かべただけで、ストレスを感じて、胸が苦しくなる。

 繰り返し問いたい。一斉消灯されて嬉しいか。1時間毎に照明が消されて、不快に思わないか。まるで籠に入れられて管理されていて、籠から出ろと追いやられている気分にならないか。追いやること自体が、人を尊重することに抵触しているとは思わないか。