「病は気から」は精神論なのか、科学で証明できるのかあなたはストレスをためていないか?ストレスをためていると感染症に罹りやすくなりがち。また喫煙や飲酒などを制限していても、日々ストレスを抱えていると、がんのリスクが高まるようだ(写真はイメージです)

要約者レビュー

「病は気から」は精神論なのか、科学で証明できるのか『「病は気から」を科学する』
ジョー・マーチャント/服部 由美(訳)
392ページ
講談社
3000円(税別)

「病は気から」と聞いても、たんなる精神論だと感じる人は多いだろう。しかし現実として、「病は気から」を実証するデータはいくつも存在するし、なかには奇跡としか思えないような現象も確認されている。

 著者は科学ジャーナリストとして、心が体に及ぼす影響を科学的に解明することに魅了されてきた人物だ。プラセボ(偽薬)、催眠術、バーチャルリアリティ、瞑想、ストレス、バイオフィードバック、宗教など、本書『「病は気から」を科学する』がとりあげるトピックは多岐にわたる。とりわけ興味深いのは、心の力がもつ効果を裏づける研究結果や症例が紹介されているだけでなく、そうした研究への批判もしっかりと紹介されている点だ。いたずらに代替医療を賛美することなく、むしろ悪質なものに対して警鐘を鳴らしているあたりは、さすが『ネイチャー』などの編集に携わっていたゆえのバランス感覚といったところか。

 本書の内容はどれも、心と体が非常に複雑に絡みあい、密接に結びついていることを示唆している。400年前、フランスの哲学者ルネ・デカルトは、主観的な「精神」と客観的な「身体」を分け、それぞれ独立した存在だと結論づけた。こうしたいわゆる心身二元論は、今もなお西洋社会に広く根づいている。だが、現代の哲学者や神経学者の多くはそうした考えをもはやナンセンスと見なしている。本書を読めば、その理由がわかるはずだ。 (伊藤 友梨)

本書の要点

・健康に対する心の役割に関しては、今でも根深い偏見が存在する。科学界や医学界では、今も心の影響が無視または軽視されていることも少なくない。
・外因的な問題そのものに害があるというよりは、それに対するストレスの多寡が健康状態を左右している。
・人は瞑想することによりストレスが軽減し、心身の健康を向上させることができる。
・代替医療にも欠点はある。しかし、私たちの抱える健康問題の多くが、心理的な原因にも起因しているのはたしかだ。だからこそ、患者の心をより尊重していく必要がある。