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香山リカの「こころの復興」で大切なこと
【第1回】 2011年4月5日
著者・コラム紹介バックナンバー
香山リカ [精神科医、立教大学現代心理学部教授]

「一日も早く」にとらわれない

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現実味が感じられない

 震災から二週間後、山形から陸路で仙台市と名取市の被災地に入りました。現地に足を踏み入れた瞬間、現実味が感じられません。市の中心部に、倒壊した建物は見当たらないのです。大地震が起こったという実感が持てず、最初は「あれ? たいしたことないんじゃない?」と思ってしまったほどです。名取市も同じでした。郊外型の都市によくある、大型スーパーやレンタルビデオ店などが整然と並ぶ道路が走っていました。

 ところが、道路一本隔てたすぐ向こう側の風景に目を転じると、大津波によって舐め尽くされ、何もかもが消失してしまった光景が広がっていました。

 津波の被害を免れた地域も、何事もなかったわけではありません。ガソリンも物資もなく、ライフラインも寸断され、日常の生活は失われてしまっています。そのうえ、街の近代的な建築物である文化会館が避難所になり、娯楽施設のボウリング場が遺体収容所になっているというような状況なのです。

 人間が営々と作り上げてきた現代の日常のなかに、あるはずのないものがある。そうした現実が、そこかしこにありました。これまで見たことのない事態を前にして、何をどのように感じたらいいのかわからないというのが率直な印象でした。

映像を見過ぎてトラウマに

 いま被災地の人はとても苦痛を強いられる環境におかれています。ですが、かといって元気を失っているというわけではありません。誤解を恐れずに言えば、被災地の人には、迷いがないのです。今日明日の死活問題に直面しているからです。むしろ、直接甚大な被害を受けていない地域の人々には、まったく質の違う問題が起こっています。

 それは、膨大な情報を浴びたことによって生じたようです。

 地震が発生した直後から、テレビやインターネットでは連日のように津波の映像が放送されました。日を追うごとに新しい映像が増え、これまでは目にすることがなかった自衛隊が撮影した映像なども、繰り返し繰り返し流されています。

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香山リカ [精神科医、立教大学現代心理学部教授]

1960年北海道札幌市生まれ。東京医科大学卒業。豊富な臨床経験を生かし、現代人の心の問題のほか、政治・社会評論、サブカルチャー批評など幅広いジャンルで活躍する。著書に『しがみつかない生き方』『親子という病』など多数。


香山リカの「こころの復興」で大切なこと

震災によって多くの人が衝撃的な体験をし、その傷はいまだ癒されていない。いまなお不安感に苛まれている人。余震や原発事故処理の経過などに神経を尖らせている人。無気力感が続いている人。また、普段以上に張り切っている人。その反応はまちまちだが、現実をはるかに超えた経験をしたことで、多く人が異常事態への反応を示しているのではないだろうか。この連載では、精神科医の香山リカさんが、「こころの異変」にどのように対応し「こころの復興」の上で大切なことは何かについて語る。

「香山リカの「こころの復興」で大切なこと」

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