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三流の維新 一流の江戸
【第45回】 2017年3月29日
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原田 伊織

明治とは本当に
清廉で透きとおった時代なのか?

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江戸という時代は、明治近代政権によって「全否定」された。
私たちは学校の教科書で、「明治の文明開化により日本の近代化が始まった」と教えられてきたが、はたして本当にそうなのか?
ベストセラー『明治維新という過ち』が話題の原田伊織氏は、これまで「明治維新とは民族としての過ちではなかったか」と問いかけてきた。
そして、今回さらに踏み込み、「2020年東京オリンピック以降のグランドデザインは江戸にある」と断言する。
『三流の維新 一流の江戸』が話題の著者に、「明治時代の正体」を聞いた。

「維新の三傑」木戸の体たらく

原田伊織(Iori Harada)
作家。クリエイティブ・プロデューサー。JADMA(日本通信販売協会)設立に参加したマーケティングの専門家でもある。株式会社Jプロジェクト代表取締役。1946(昭和21)年、京都生まれ。近江・浅井領内佐和山城下で幼少期を過ごし、彦根藩藩校弘道館の流れをくむ高校を経て大阪外国語大学卒。主な著書に『明治維新という過ち〈改訂増補版〉』『官賊と幕臣たち』『原田伊織の晴耕雨読な日々』『夏が逝く瞬間〈新装版〉』(以上、毎日ワンズ)、『大西郷という虚像』(悟空出版)など

 この京都府と裁判所の対立は、中央の重大な政治問題に発展する。
 それはまた、大蔵省と司法省の対立となった。
 木戸は、こういう子分の不始末に振り回されることになる。
 新政府で唯一の理論家であり、近代人であった江藤の創った裁判所は、一般市民にとっては人権の最後の砦であったが、新政府官員にとっては邪魔者であったのだ。

 京都の一件について木戸は、裁判所など廃止した方が天下のためであり、人民のためになると息巻いたが、これは一体どういう理屈であろうか。

 恐らく、自分の資金源を断たれたくなかったのであろう。
 西郷が、朝鮮への使節派遣問題で窮地に立っている時、この男の頭は犯罪を犯した自分の子分の救済と、不正を容赦しない司法省、即ち江藤に対する憎悪で占められていたのである。
「維新の三傑」などといわれてきた木戸にしてこの有様である。

司馬史観への疑問

 「明治は清廉で透きとおった公感覚と道徳的緊張=モラルをもっていた」(司馬遼太郎氏)とは、一体どこをみた論であろうか。

 明治は、少なくとも初期から前半にかけては腐敗し切っていたのである。
 これらの醜悪な権力犯罪が問題となった時期は、先に述べた「違式かい違条例」が施行され、「文明開化」の大合唱の中、庶民がこれまでの風俗まで「野蛮だ」「非文明だ」と決めつけられて西欧化を強制されていた時期と重なる。

 実態は、何でも西洋風を強制していた、長州人を中心とした新政府首脳こそが、西洋人が知ったら驚愕するような腐敗の権化(ごんげ)ともいうべき存在であったのだ。
 このことが、西郷の心理に影響を与えたことは明白である。
「軍(いくさ)好き」で「策謀好き」の西郷ではあったが、木戸と違って不正という汚濁(おだく)には包まれていなかった。

 もし、西郷に、木戸やその子分、山縣、井上や槇村のように強烈な金銭欲があったなら、彼はもっともっと長い一生を送ったに相違ないと思われてならない。

 このような権力欲、金銭欲に支配され、汚濁にどっぷり浸(つ)かった政権は、残念ながら三流の政権と位置づけざるを得ないであろう。
 相対比較でしかないが、倫理観の欠落が特に著しい、単に西洋にかぶれることを近代であると錯覚するようなレベルの明治近代政府に比べれば、どこまでもオリジナルな価値観を貫き、徹底して戦というものを許さない社会を構築した江戸政権とは、世界史的にみても一流であったと評価せざるを得ないのだ。

 そして、三流が一流を野蛮だ、非文明だと批判するなどは、暴論の極みか、或いは哀れな思い違いであるとしかいえないのである。

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「三流の維新 一流の江戸」

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