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「世界中で深刻化する人間の社会的孤立問題
ネットの間違った使い方も“寂しい人”急増の一因」
社会神経学の大家 ジョン・カシオポ博士に聞く

【第55回】 2011年4月8日
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“無縁社会”や“孤立死”などの言葉に象徴されるように日本では最近、独り暮らしで社会的なつながりをもたない“寂しい人“が急増している。寂しさの原因はどこにあるのか、寂しさは人々の行動や健康にどう影響するのか、寂しさを克服するにはどうすればよいのか。実は、寂しい人が増えているのは世界的な現象である。社会神経科学の第一人者、シカゴ大学のジョン・カシオポ教授は「寂しさはインフルエンザのように人から人へと“伝染”し、睡眠障害、免疫機能低下、高血圧、うつ病などを引き起こす。早めに対応しないと大変なことになる」と警鐘を鳴らす。(聞き手/ジャーナリスト、矢部武)

――日本では最近、社会的に孤立している人、寂しい人が増えているが、米国でもその傾向はあるのか。

ジョン・カシオポ(John T Cacioppo)
シカゴ大学心理学部教授、同大学認知社会神経科学センター長を兼務。専門は「社会的孤立」と「つながり」、感情・影響・態度などの評価プロセス。神経科学と社会科学の両アプローチを取り入れた画期的な方法で、寂しさが人々の健康や行動にどう影響するかを調査し、寂しさの克服法を具体的に提案する。とくに「寂しさは人から人へと“伝染”する」、「寂しさは“遺伝”する」などの研究調査は大きな注目を集めている。アメリカ心理学会(APA)の会長賞(2008年)、人格・社会心理学協会(SPSP)の理論的革新賞(同年)などを受賞。

 全米退職者協会(AARP)が行った最新調査では、寂しいと感じる米国人の割合は10年前の21%から30%近くに増えている。理由はいろいろ考えられるが平均寿命が延びていること、単身世帯の増加なども背景にあると思われる。単身者は家族や友人とのつながりが薄いことも調査でわかっている。

 年齢別では45歳~65歳の層が最も高いが、これは景気後退で主に中高年が人員削減の標的にされていることも関係していると思われる。育ち盛りの子供をかかえて失業し、なかなか再就職できないとなれば、寂しさ、孤独感がつのるだろう。

 最近は人と直接交わるのではなく、インターネットの世界でつながろうとする人が増え、テクノロジーが人間の代用になりつつある。インターネットでも1対1で直接向き合えればよいが、そうでないとかえって孤立感を深めてしまう。

――あなたは「寂しさはインフルエンザのように人から人へ“伝染”する」との調査結果をまとめたが。

 私たちシカゴ大学の研究チームは他の2大学と共同で、マサチューセッツ州フラミンガムの住民数千人を約10年にわたり調査した。その結果、集団のなかで1人が寂しいと感じ始めると、そのネガティブな感情が他の人にも広がり、寂しいと感じる人がどんどん増えてしまうことがわかった。

 この調査結果は2009年12月に発表したが、寂しさが伝染するメカニズムを簡単に説明しよう。

 たとえば、私とあなたが友人だとする。もし私が寂しいと感じると、あなたに対して嫌な態度を取り始め、お互いの友人関係は破綻するかもしれない。すると、あなたも私のネガティブな感情や態度に影響され、他人に対して嫌な態度を取り始める。その結果、私だけでなく、あなたもどんどん孤立していくということだ。このプロセスは比較的親しい人間同士のインタラクション(相互作用)を通してゆっくりと進んでいくのである。

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