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安東泰志の真・金融立国論

「復興基金」は日本復活の切り札になるか~復興は投資家主導で

安東泰志 [ニューホライズン キャピタル 取締役会長兼社長]
【第8回】 2011年4月11日
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「復興基金」構想の背景

 連載第7回で述べたように、東日本大震災の被害は被災地の直接的な被害だけで20兆円規模になるとされているが、実際には原発事故・電力不足・サプライチェーンの寸断などによる企業活動への悪影響も大きく、日本経済全体に与えるインパクトは甚大である。

 政府は、今後数次に亘る補正予算を組む方針とされており、最終的には20兆円程度の規模になると言われている。23年度当初予算では、税収を前年度比1.3兆円多く見積もった上で、新規国債発行額を44兆円台に抑え込んでいるが、今回の震災の影響を考えると、税収が前年を上回ることは非常に考えにくく、国債発行額は自然体でも45兆円を超えていくはずである。

 これに加えて仮に20兆円もの新規補正予算を全額国債で賄うとすれば、まさに未曾有の事態であり、本年度の国債消化の可否が問われることは勿論、「2015年度までに基礎的財政収支のGDP比を半減させる」という国際公約の達成は極めて困難となり、国際的な信認を失う結果、場合によっては国債価格の急落をもたらし、日本経済に壊滅的な影響を及ぼしかねない。

 政治家の一部には、日銀が国債を引き受ければいいという安易な議論があるが、連載第1回でも述べたように、これは日本への信認を失わせる禁じ手であり、抑制の効かない通貨安とインフレへの道に繋がるものである。

 従って、かねて筆者が主張しているように、まずは民主党が掲げてきた経済効果の小さなマニフェスト施策を棚上げし、不要不急の公共工事を凍結して被災地に回すなどの工夫を重ねることにより、数兆円の予算を捻出することから始めるべきだろう。しかし、一般会計の公共事業費は総額でも5兆円弱、子ども手当は3兆円弱、農家戸別補償制度は1兆円弱、高校無償化で4千億円、高速道路無料化で1千億円の予算であり、これらの削減をどんなに頑張っても、せいぜい5兆円を捻出できるかどうかであろう。また、復興税の新設を主張する意見もあるが、1923年の関東大震災の時に取られた緊縮財政が大不況をもたらしたように、経済の見通しが暗い時期の増税には慎重さが必要である。

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安東泰志 [ニューホライズン キャピタル 取締役会長兼社長]

東京大学経済学部卒業、シカゴ大学経営大学院(MBA)修了。1981年に三菱銀行(現三菱東京UFJ銀行)入行、1988年より、東京三菱銀行ロンドン支店にて、非日系企業ファイナンス担当ヘッド。90年代に英国ならびに欧州大陸の多数の私的整理・企業再生案件について、参加各行を代表するコーディネーターとして手がけ、英国中央銀行による「ロンドンアプローチ・ワーキンググループ」に邦銀唯一のメンバーとして招聘される。帰国後、企画部・投資銀行企画部等を経て、2002年フェニックス・キャピタル(現・ニューホライズンキャピタル)を創業し、代表取締役CEOに就任。創業以来、主として国内機関投資家の出資による8本の企業再生ファンド(総額約2500億円)を組成、市田・近商ストア・東急建設・世紀東急工業・三菱自動車工業・ゴールドパック・ティアック・ソキア・日立ハウステック・まぐまぐなど、約90社の再生と成長を手掛ける。事業再生実務家協会理事。著書に『V字回復を実現するハゲタカファンドの事業再生』(幻冬舎メディアコンサルティング 2014年)。
 


安東泰志の真・金融立国論

相次ぐ破綻企業への公的資金の投入、金融緩和や為替介入を巡る日銀・財務省の迷走、そして中身の薄い新金融立国論・・・。銀行や年金などに滞留するお金が“リスクマネー”として企業に行き渡らないという日本の問題の根幹から目をそむけた、現状維持路線はもはや破綻をきたしている。日本の成長のために必要な“真”の金融立国論を、第一線で活躍する投資ファンドの代表者が具体的な事例をもとに語る。

「安東泰志の真・金融立国論」

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