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安東泰志の真・金融立国論

日本経済の成長に本当に必要なことは
金融緩和よりも“産業金融”の改善だ

安東泰志 [ニューホライズン キャピタル 取締役会長兼社長]
【第1回】 2010年10月20日
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 まず、本連載を始めるに際して前提理解として必要な事実を再確認しておきたい。

(1)家計部門の金融資産

 日銀の資金循環統計によれば、2010年6月末時点で、家計部門の金融資産は1445兆円となっている。その反対側、すなわち家計部門の負債は367兆円なので、ネットすると家計部門は1078兆円という巨額の金融資産を持っていることになる。

 ただし、家計部門の金融資産は1999年にはすでに1400兆円を突破しており、それから11年かけてわずかに45兆円程度しか増えていない。後述する公的年金の運用利回りの前提は現在4.1%である。公的年金は家計部門の代表的な運用の受け皿であり、仮に家計部門の資産が年率4.1%で運用されておれば、この11年で約56%、すなわち約780兆円も増えていた計算になる。家計部門の金融資産が現実にはいかに有効活用されていないかということの証左であろう。

(2)日本の名目GDP

 日本の名目GDPは、2010年現在、約475兆円である。しかし、10年前の2000年のGDPは、約503兆円であった。同じ期間、米国の名目GDPは、9兆9514億ドルから14兆7996億ドルへと、約50%も増加していることと比較すると、日本の低成長は目を覆わんばかりである。

(3)国の債務の推移

 今年度末の公的債務の残高は、国債等637兆円、借入金等59兆円、財投債130兆円、政府短期証券147兆円を合計して、約973兆円になると見込まれている。また、これとは別に、地方の債務残高は200兆円が見込まれている。政府短期証券や財投債を入れるか除くかという議論はあろうが、国と地方の債務は、合計で少なくとも900兆円前後、最も広く見積もれば1200兆円前後に達していることがわかる。

(4)日銀の当座預金残高

 日銀は超金融緩和を継続している。2年前は9兆円前後であった日銀当座預金の残高は、先月のいわゆる「非不胎化介入」による2兆円の追加緩和も加えて17兆円前後と、倍の規模に膨らんでいる。

(5)銀行の預貸率

 銀行の預金に対する貸付金の割合を「預貸率」と言う。預貸率は、10年前の2000年10月時点では、都銀が102%、地銀が76%、第二地銀が84%、信金が66%であったが、直近の数字は、各々70%、74%、76%、53%と、大きく低下している。

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安東泰志 [ニューホライズン キャピタル 取締役会長兼社長]

東京大学経済学部卒業、シカゴ大学経営大学院(MBA)修了。1981年に三菱銀行(現三菱東京UFJ銀行)入行、1988年より、東京三菱銀行ロンドン支店にて、非日系企業ファイナンス担当ヘッド。90年代に英国ならびに欧州大陸の多数の私的整理・企業再生案件について、参加各行を代表するコーディネーターとして手がけ、英国中央銀行による「ロンドンアプローチ・ワーキンググループ」に邦銀唯一のメンバーとして招聘される。帰国後、企画部・投資銀行企画部等を経て、2002年フェニックス・キャピタル(現・ニューホライズンキャピタル)を創業し、代表取締役CEOに就任。創業以来、主として国内機関投資家の出資による8本の企業再生ファンド(総額約2500億円)を組成、市田・近商ストア・東急建設・世紀東急工業・三菱自動車工業・ゴールドパック・ティアック・ソキア・日立ハウステック・まぐまぐなど、約90社の再生と成長を手掛ける。事業再生実務家協会理事。著書に『V字回復を実現するハゲタカファンドの事業再生』(幻冬舎メディアコンサルティング 2014年)。
 


安東泰志の真・金融立国論

相次ぐ破綻企業への公的資金の投入、金融緩和や為替介入を巡る日銀・財務省の迷走、そして中身の薄い新金融立国論・・・。銀行や年金などに滞留するお金が“リスクマネー”として企業に行き渡らないという日本の問題の根幹から目をそむけた、現状維持路線はもはや破綻をきたしている。日本の成長のために必要な“真”の金融立国論を、第一線で活躍する投資ファンドの代表者が具体的な事例をもとに語る。

「安東泰志の真・金融立国論」

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