原子力事業で7000億円を超える損失を計上する東芝。今期末に債務超過を解消できず、東証2部に降格する情勢だ。元凶の原発事業を抱えたまま、稼ぎ頭の半導体事業は来期にも過半の株式売却に追い込まれることになった。“東芝解体”は想定を超えるスピードで現実化しつつある。(「週刊ダイヤモンド」編集部 村井令二)
「半導体の売却は19・9%にこだわっている場合ではないだろう。来期に持ち越してでも過半を売却して資金確保に動くべきだ」。東芝の主力取引銀行の幹部は厳しい口調で話す。
東芝は2月14日、米子会社ウエスチングハウス(WH)を中心とする原発事業の損失額が7125億円に上りそうだと発表した。記者会見で綱川智社長は、分社化する半導体のフラッシュメモリー事業の株式売却について「マジョリティー(過半数)のキープにこだわらないことに変えた」と述べ、2割未満から、過半の売却への方針転換を表明した。
主力行はこのわずか数日前にフラッシュメモリー事業の過半売却を要請。こうした取引銀行の「圧力」の背景には、今回の米原発事業の巨額損失を確定する作業の中で浮上した、新たな不正会計の疑惑がある。
東芝が14日に発表した原発事業の損失は、監査法人の承認を得ない会社側の見通しだ。1月8日と19日の2度にわたるWH従業員からの内部通報を受けて、原発事業の損失を確定する作業の中で、「WH経営者のプレッシャー」が存在した疑いが出てきたためだ。
仮にWH経営者の関与で原発事業の損失が過少に見積もられたなら決算に影響する。このため「さらなる調査が必要」(佐藤良二・監査委員長)として、決算前日の13日に延期の方針を固めた。
みずほ銀行など主力3行は3月末までの融資継続を決定したが、東芝が15日に開催した取引銀行向け説明会では、ガバナンスや情報開示に厳しい意見が飛び交った。ある銀行関係者は「東芝は何が起こるか分からない」と警戒感を隠さない。
決算延期をめぐる混乱は東芝をさらに窮地に追い込む。同社は現在、東京証券取引所の上場廃止の恐れがある特設注意市場銘柄に指定中で、審査期限の3月15日以降も、監理銘柄に移行して審査を継続することが決まっている。審査を担当する日本取引所グループ傘下の自主規制法人の幹部は「東芝は多様な問題を抱えているので審査には時間がかかる」と述べる。