働き方改革の肝は「男性管理職」をいかに変えるか
「働き方改革」は今や、“国家プロジェクト”として政府をはじめ各企業が取り組みを推進している。しかし私自身の経験で言えば、これほど「アンシャンレジーム(旧体制派)」が強い抵抗を示すテーマもそうない。働き方改革が「革命」になるためには、経営トップの人材に対する考え方を根本から見直さなければならない。
カルビーは、1990年代前半からフレックスタイム制の導入を進めてきたが、11年の東日本大震災を機に、定時帰宅や有給消化の奨励、在宅勤務等の「ライフ・ワーク・バランス(LWB)」も推進している。
また、私がカルビーに来てから「ダイバーシティ&インクルージョン(D&I)」の推進にも力を注いできた。カルビー単体の従業員の男女比率は53:47でほぼ半々。だが女性の役員比率は18.8%、管理職比率は22.1%でまだまだ低い。20年には管理職比率を30%に上げるとコミットメントをしている。
これらの取り組みは、テレワークの推進において厚生労働大臣賞を受賞したり、女性活用に優れた上場企業を認定する東証の「なでしこ銘柄」に3年連続で選定されたりしている。
しかし、会長兼CEOに就任し、一連の制度導入を進めるなかで最も抵抗したのは男性管理職だった。それは「悪しき昭和の文化が根付いた旧体制的な既得権益にしがみつく発想」と言ってもよかった。
テレワークを導入しようとした時も、「松本さん、こんなのはダメですよ」と真っ先に反対してきたのは男性管理職だ。「どうしてなのか」と聞くと、「在宅ワークなんか進めたら、絶対にサボる奴が出てきます」と言う。それで私はこう言った。「君は会社に来てサボっているじゃないか」。
残業代欲しさにダラダラと会社に残っている者もいる。それとサボりがどう違うのか。工場のように時間で働かなければならない仕事もある。しかし、そうでなければ成果さえ出せば、どこで働いてもいいのだ。
女性の管理職が増えていくことについても、異論を唱えたのは、またもや男性管理職だ。私が、「人類の男女比率が半々なのだから、管理職比率だって半々でいいじゃないか」と提案すると、「どのような問題が起こるか分からない」と。しかし、そんなのはやってみなければ分からない。
ことさら男性管理職をやり玉に挙げたが、同じような意識を経営トップ以下、いまだに思っている会社は多いだろう。それは、働けば働いただけ儲かる、時間と成果が比例するバブル期までの発想の染みついた人がまだ多いということと、そもそも「人材への投資」という考え方が抜本的に希薄、ないしは間違っているからではないのか。
働き方改革を考える前提として、この「人材への投資」という考え方が希薄なのが現状だ。