食は、どうなる。
【第1回】 2011年4月13日 足立直樹

食と私たち ~余分な食に対応できない人類~

 私たちは毎日、あたり前のように三回の食事をとっています。それはあまりにあたり前すぎて、私たちがその意味や重要性を考えることはほとんどありませんが、できればおいしくて、安全なものをゆっくり食べたいということは、誰もが思っているはずです。そして幸いなことに、これまでの数十年は、日本ではそれがほぼ可能な状況だったと言えるでしょう。

 しかし、人類の長い歴史を振り返ってみれば、それはそんなにあたり前のことではありません。氷河期には当然のことながら圧倒的に食料は不足していましたし、戦争中は食べたいものも食べられない状況でした。人類の歴史を24時間に置き換えると、飢えの問題から解放されていた時間は1秒に満たないと言われています。

 つい最近では、東電原発事故による野菜や魚、そして水の汚染には、誰もが神経を尖らせていることと思います。そう考えれば、私たち人類の「食」はそんなに「あたり前」のことではないことがわかります。

 さて、私たちは生きものである以上、食べなくては死んでしまいます。食べることで、生きていくためのエネルギーを得る必要があるのです。

 ただ、それは車がガソリンで動いたり、ロボットが電池で動いたりするのとは少し違います。たしかにカロリー(熱量)も必要です。しかし生きものは食べ物を食べることで、食べ物のもつエネルギーのみならず、食べ物を構成する成分を取り込み、自分の身体の成分とするからです。まさに、食べ物は、血となり肉となるのです。

生き物の命が
人間の命になるシステム

 その食べ物ですが、私たち人間にとっての食べ物とはほとんどすべて、元は他の生きものです。肉や魚はもちろん、米も野菜も、すべて他の生きもの、つまりは命です。私たちは命でつながっているのです。

 命のつながりの最初はいつも、植物です。太陽の光を受けた植物は、そのエネルギーを光合成で糖に変えます。その植物を動物が食べると、糖やタンパク質が分解され、動物の身体の中で燃やされます。物質の中に閉じこめられていたエネルギーが再び熱として解放され、それが動物の身体を動かすのです。

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足立直樹

東京大学理学部卒、同大学院で理学博士号取得。国立環境研究所、マレーシア森林研究所(FRIM)を経て、コンサルタントとして独立。専門分野はCSR、環境経営、環境コミュニケーション。日本生態学会常任委員、環境経営学会理事、環境省生物多様性広報・参画推進委員会委員、環境省生物多様性企業活動ガイドライン検討会委員、国際NGOナチュラル・ステップ・ジャパン理事、サステナビリティ日本フォーラム運営委員などを務める。


食は、どうなる。

現在、私たちをとりまく食の背景には、安全性の問題や、気候変動の影響など、とても複雑な事情や問題が絡み合っています。私たちが食べているものを様々な視点から見て、私たちの命を支えている食の仕組みをあらためて考えてみましょう。

「食は、どうなる。」

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