食事にバツをする医者写真はイメージです Photo:PIXTA

糖尿病患者が血糖値を下げるには、カロリー制限よりも糖質制限が有効だが、極端な糖質制限は危険である。糖尿病にいい食事はなかなか難しい。糖尿病に良い食べ物や食べ方を専門医が紹介する。本稿は、矢野宏行(Dr.ゆきなり)『自分でできる!薬に頼らない糖尿病の大正解』(ライフサイエンス出版)の一部を抜粋・編集したものです。

カロリー制限中心の食事では
血糖値が下がらない理由

Q「糖尿病になったらどのような食事制限をするとよいでしょうか?」

A「カロリー制限中心では血糖値は下がりません。ほどよく炭水化物を控える糖質制限がお勧めです。なお、1日の糖質の摂取量は100~120gを目安にするとよいでしょう」

 糖尿病になると医師から食事制限を勧められる方が多いと思います。確かに、肥満になると、血糖値が上がるリスクが高まるのは間違いありません。しかし、私が毎年3000人以上の糖尿病患者さんを診てきた中で、カロリー制限中心の食事指導で血糖値が思うように下がった方は残念ながらほとんど見たことがありません。実はそれには理由があります。

 まず、消費カロリーと摂取カロリーの差が直接体重の減量につながるわけではないということです。糖尿病患者さんの多くが運動でカロリーを消費したり、食事制限をしたりすれば痩せるとお考えかもしれませんが、実は消費カロリーには各自の基礎代謝量が大きく関係しています。

 基礎代謝量は年代、性別などによって個人差があり、食事量によっても変化します。これを上げるには全身の筋肉量を増やす必要があります。そのため、血糖値を下げるサイクルに入るまでに大幅な時間がかかってしまうのです。

 そこで、血糖値を下げるためにお勧めしたいのが糖質制限です。糖質制限した糖尿病患者を対象にした研究によると、「糖質制限は血糖降下薬を服用していない2型糖尿病(編集部注/遺伝的要因と生活習慣の乱れが原因で発症する、最も多い糖尿病)患者の体重を減らし、HbA1c(編集部注/糖化ヘモグロビンがどのくらいの割合で存在しているかをパーセントで表したもの)を改善した」ことが分かっています。つまり、糖質制限をすれば、血糖値が下がるだけでなく、肥満を解消する効果もあるのです。