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電子書籍ビジネスで時代の最先端を走りながら
リアルの世界では古本も新刊本も同じ棚で売る
書店経営の革命児パウウェルズの顧客感動創造術

瀧口範子 [ジャーナリスト]
【第140回】 2011年4月15日
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 電子書籍ビジネスが本格的に広がり始めている。アマゾン・ドットコムが出現してインターネットで本が買えるようになったときから、書店ビジネスの先行きは危ぶまれていたが、クリックひとつで本の中身が読めるようになってからは、もはや書店に生き残る術はないのではと考える人も多いことだろう。

 しかし、そんな中でも、しっかりと生き残っている書店はある。いや、生き延びている以上に、そうした書店は、電子書籍時代だからこそ人びとがふたたび足を運びたくなる場所として愛されているのだ。その代表格が、パウウェルズ・ブックスである。

 オレゴン州ポートランドの書店パウウェルズ・ブックスは、アメリカの本好きならば誰もが知っている名前だ。市内に4店舗を構え、中でも本店は6300平米もの広さがある。市内の一区画がまるごと書店といった感じだ。

 パウウェルズを「アメリカでもっともいい書店」と評する人は多い。その理由は、本のセレクションが優れていること、たくさんの本が揃っていること、経営者が本を愛していると伝わってくること、そしてテクノロジー導入にいつも積極的で時代の先端を走っていることである。

 たとえば、パウウェルズがウェブサイトを立ち上げて、本をオンラインで売り始めたのは1994年。あのアマゾンよりも先だった。さらに、第1世代の電子書籍リーダーが出たとき、パウウェルズは真っ先に書籍コンテンツをウェブサイトから提供した。これが99年のことである。アマゾンがキンドルを発売する8年も前のことだ。

 その後もさまざまなデバイスで電子書籍が読めるように工夫をこらし、現在ではグーグルの電子書籍販売であるグーグルeBooksを導入している。

 ちなみに、グーグルは、自社の書店サイト以外に全米の独立系書店に電子書籍販売のバックエンドを提供している。読書はオンラインで行い(ダウンロードも可能)、アマゾンのキンドルやアップルのiBookstoreとは違って、幅広いデバイスでアクセスできるのが売りだ。書籍へのオープンなアクセス環境を唱えてきたパウウェルズの哲学と合致する。

 このように、人びとの知識吸収を手助けするための先鋭的なテクノロジーの導入にも積極的なのだ。そんなイノベーションの空気を味わえる書店はそう多くはないだろう。最近では、来訪者が店内でお目当ての本を探すためのiPhoneアプリまで開発した。客は、それをまるでナビゲーションのように見ながら、広大な店内を歩いて目的の書棚に向かえばいいわけだ。

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瀧口範子 [ジャーナリスト]

シリコンバレー在住。著書に『行動主義: レム・コールハース ドキュメント』『にほんの建築家: 伊東豊雄観察記』(共にTOTO出版)。7月に『なぜシリコンバレーではゴミを分別しないのか?世界一IQが高い町の「壁なし」思考習慣』(プレジデント)を刊行。


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