アラブ諸国で連鎖的に発生する市民革命。そもそもの発端は、食糧不足に対する国民の不満だった。世界を見渡せば、食糧不足とそれに伴う食糧価格の高騰が、かつてないほど深刻化している。原油など資源価格の高騰には敏感な我々日本人も、食糧問題となると現状を詳しく知らない人が多いのではなかろうか。しかし、日本にとって食糧不足は無視できない深刻な問題だ。東日本大震災の影響により、一部の食糧に供給不安が囁かれている今だからこそ、我々は目の前の食糧問題と真剣に向き合わなければならない。資源・食糧市場に精通する丸紅経済研究所の柴田明夫代表に、食糧の現状と課題について詳しく聞いた。(聞き手/ダイヤモンド・オンライン 小尾拓也、撮影/宇佐見利明)
世界の食糧相場はかつてない
「高値不安定」の状態が続く
――食糧価格が世界的に高騰している。2008年に史上最高値をつけた大豆、小麦、トウモロコシなどの穀物は、リーマンショックで下落したものの、足もとでは再び最高値を目指す上昇基調に入った。まさに「食糧大高騰時代」を思わせるトレンドを、どう分析しているか。
穀物価格は、2008年に歴史的な上昇を見せた後、同年後半に発生したリーマンショックの影響で急落した。海外の穀物相場が下落して円高にも振れたため、食糧を大量輸入する日本では、価格上昇が一定の範囲に収まったという認識が広まり、危機感が失われた。
しかし、これは短期的に安値に振れただけの話だ。中長期的に見れば、食糧市場はむしろかつてない高値不安定の状況を続けており、均衡点価格が切り替わっていく過程にある。
これまで、大豆、小麦、トウモロコシなどの穀物価格は、平均して1ブッシェル=5ドル、3ドル、2ドル程度だった。干ばつによる不作などの影響で、一時的に高騰することもあったが、不足が解消されれば元に戻り、総じて安値で推移してきた。