サムスンに経営トップ逮捕で浮上する2つの懸念<br />Photo:Lee Jae-Won/AFLO

韓国経済の雲行きが怪しくなっている。昨年秋以降、韓進海運の破綻、サムスン電子のギャラクシーノート7の出荷停止、崔順実(チェ・スンシル)被告の国政介入疑惑に端を発する政治混乱などが相次いだ上、今回、サムスングループの事実上のトップであるサムスン電子の李在鎔(イ・ジェヨン)副会長が逮捕された。果たして、韓国経済はどうなるのだろうか。(日本総合研究所上席主任研究員 向山英彦)

株式市場や為替市場を揺るがした
サムスンショック

 韓国経済においてサムスングループは圧倒的な存在感を放ち、サムスン電子はその中核的存在である。韓国公正取引委員会は毎年4月、相互出資および債務保証制限企業集団に指定した企業集団を発表する。いわば企業集団の番付である。16年4月の発表資料では、資産総額のトップがサムスングループで、上位20グループの合計資産額の2割弱を占める。韓国の輸出額全体に占めるサムスングループの輸出額も2割程度と推定される。このため、サムスングループの動向は常に内外投資家の関心の的になり、業績の悪化はアーニングショック(予想外の情報による市場価格の急落)として株式市場や為替市場を揺るがしてきた。

 今回の李在鎔副会長の逮捕直後、一部で「サムスンの危機」が叫ばれた。しかし、サムスン電子の株価は、小幅な下落にとどまった。実はこれと似た動きは、昨年秋の「ギャラクシーノート7」の発火が問題になったときにも見られた。さすがにその時の下落幅は今回よりも大きかったが、比較的早期に元の水準に戻った。市場が冷静に反応したのはなぜなのか。これを解く鍵は、同社の収益構造の変化にある。