ダイヤモンド社のビジネス情報サイト
長内 厚のエレキの深層

サムスン「スマホ発火」に付け込めない日本企業の戦略ミス

長内 厚 [早稲田大学商学学術院大学院経営管理研究科教授/早稲田大学台湾研究所研究員・同IT戦略研究所研究員/ハーバード大学GSAS客員研究員]
【第17回】 2016年10月26日
著者・コラム紹介バックナンバー
1
nextpage

「Galaxy Note 7」発火問題
不安は高級モデル主導の北米市場

発火したGalaxy Note 7を持つ女性(ホノルルで) Photo:AP/AFLO

 サムスンの高級スマートフォン「Galaxy Note 7」の発火問題は、リコールでは解決せず、生産終了、全品回収という結末を迎えた。この問題の影響が最も懸念されるのが米国市場だ。

 米国運輸省は、10月14日にNote 7の航空機内への持ち込み禁止を発表した。違反者には刑事罰が科される。

 日本のスマホ市場では、これまで高級モデル、普及モデルという価格帯の違いを意識することはなかった。最近ではNTTドコモが19日に発表した650円前後で発売するスマホが、中国ZTEの低価格モデルであり、もしかすると日本でも今後本格的に低価格モデルが普及することがあるかもしれない。しかし、少なくともこれまでは、同じメーカーのスマホであれば、高級モデルも普及モデルもなく、端的に言えば、日本市場には高級モデルしか上市してこなかった。

サムスンのスマホ「持ち込み禁止」の告知

 視点をグローバルな市場に移すと、中国、アジア、中南米などの市場では比較的低価格のスマホが売れ、欧米諸国や中国の富裕層向けには高級モデルが売れるという棲み分けがあり、今回問題になったサムスンのnote 7は同社の高級ラインアップであるSシリーズの商品であるから、低価格モデルがメインの市場ではnote 7問題による消費者のイメージダウンは限定的と言えるであろう。むしろ、影響が懸念されるのは、高級モデルが売れる市場、とりわけ北米市場である。

 サムスンやLGなど韓国の大手家電メーカーと日本の家電メーカーの最大の違いは、グローバル化の本気度である。日本には幸か不幸か中途半端にサイズの大きい国内市場というものがあり、海外で苦労しなくても日本でそこそこのヒット商品を出せればそれなりの成果につながってきた。

 だからこそ、海外の市場でうまくいかなくなると国内志向が高まり、海外市場からの撤退によるコストダウンで一時的なV字回復ができてしまうのだ。これが、日本の家電メーカーに甘えを許している原因の1つである。

1
nextpage
関連記事
スペシャル・インフォメーションPR
クチコミ・コメント

DOL PREMIUM

PR

経営戦略最新記事» トップページを見る

最新ビジネスニュース

Reuters

注目のトピックスPR

話題の記事

長内 厚 [早稲田大学商学学術院大学院経営管理研究科教授/早稲田大学台湾研究所研究員・同IT戦略研究所研究員/ハーバード大学GSAS客員研究員]

京都大学大学院修了・博士(経済学)。1997年ソニー株式会社入社後、映像関連機器部門で商品企画、技術企画、事業本部長付商品戦略担当、ソニーユニバーシティ研究生などを歴任。その後、神戸大学経済経営研究所准教授を経て2011年より早稲田大学ビジネススクール准教授。2016年より現職。早稲田大学IT戦略研究所研究員・早稲田大学台湾研究所研究員を兼務。組織学会評議員(広報委員会担当)、ハウス食品グループ本社株式会社中央研究所顧問、(財)交流協会貿易経済部日台ビジネスアライアンス委員。(長内研究室ホームページ:www.f.waseda.jp/osanaia/

 


長内 厚のエレキの深層

グローバル競争や異業種参入が激化するなか、従来の日本型モノづくりに限界が見え始めたエレキ産業は、今まさに岐路に立たされている。同じエレキ企業であっても、ビジネスモデルの違いによって、経営面で大きな明暗が分かれるケースも見られる。日本のエレキ産業は新たな時代を生き延び、再び世界の頂点を目指すことができるのか。電機業界分析の第一人者である著者が、毎回旬のテーマを解説しながら、独自の視点から「エレキの深層」に迫る。

「長内 厚のエレキの深層」

⇒バックナンバー一覧