また、現在、韓国の政治、経済、軍事のリーダーである朴槿恵大統領は、弾劾訴追案の成立を受け、事実上、無力化している。構造改革を進める指導力を持ったリーダーの不在に加え、国内では世論の不満に呼応して、ポピュリズム政治が進みやすくなっている。

 政治が不安定な状況下、大統領の独裁的な権限を分散し、民主化を進めることは容易ではない。その状況が続くと経済界からの要請が根強い、急激なウォン安などに対応するための日韓の通貨スワップ協議など、韓国経済に必要な取り組みを議論することすらままならない。それに加え、韓国ではわが国を上回るペースで少子高齢化が進行している。中長期的な視点で経済の実力=潜在成長率を引き上げることが可能かは不透明だ。

 元々、朝鮮半島は、世界の安全保障にとって極めて重要な地政学的ポジションを占めている。朝鮮半島は、米国と中国、そして、ロシアの勢力争いのエネルギーがぶつかり合う地点だ。その意味では、中国やロシアのエネルギーを食い止める韓国の役割は決して小さくはない。

 仮に韓国の政治混乱が続き経済の低迷が続くようだと、韓国の防波堤としての役割が低下し、朝鮮半島の情勢はさらに緊迫することも懸念される。トランプ政権と中国の関係が悪化し、それに伴って北朝鮮と韓国間の緊張レベルが上がる恐れもある。

 そうしたリスクを考えると、韓国はいびつな経済構造を変えるとともに、民主化を進めて国力を高めることが重要だ。韓国の政治・経済の安定が実現できるかどうかは、今後の世界にとって無視できないリスク要因になりつつある。

 わが国としても、韓国の混乱は“対岸の火事”では済まされない。思い切った構造改革を進めて経済回復を図り、経済外交を通してアジア各国との連携を強化することが必要不可欠になる。

(信州大学教授 真壁昭夫)