県外の人に、「さぬきと言えばうどん」と期待を抱かれることが多いが、うどんの発祥地は香川県の西部であり、さぬき市がある東部はうどんの本場とは言えない。しかも、この地を訪れた観光客が指名買いするのは、「灸まん」「かまど」「瓦せんべい」といった県西部や高松市の伝統銘菓である。

 さぬき市は、香川県の東の外れにある、人口約5万3000人ののどかな町である。お遍路さんたちは、「結願」(けちがん。結願成就)を目指して四国霊場八十八ヵ所を回っていくが、同市はその上がり三ヵ寺(86番・志度寺、87番・長尾寺、88番・大窪寺)を抱える観光名所でもある。

 しかし、若者は都会に職を求めて地元を離れ、人口は毎年約1%の減少が続いている。今や3人に1人がお年寄りという、過疎化が進む典型的な地方都市である。加えて、長引く景気の低迷のため、多くの事業者が赤字に悩んでいた。

うどんブームに乗れなかった過疎の町が、<br />まんじゅうで町おこし?!<br />目前に瀬戸内海、背後に緑豊かな山々を抱えているが、高齢化や過疎化 に悩まされている(撮影:岩城文雄)

 このままでは早晩、立ち行かなくなる。この町を活性化するために、観光名所にふさわしい土産物を開発できないか。誇りを持って人に勧められる土産物ができれば、事業者も土産物店も自信を取り戻せるのではないか。三谷局長はそう考えたのだった。

「正直に申し上げて、土産物の開発は初めてです。お役に立てるかどうか……」