内閣府の発表によれば、介護保険制度で「要支援」「要介護」と認定された人は2013年度末で約570万人にのぼり、日本は「誰もが介護し、介護される」“大介護時代”に突入したといえます。ただ、介護の現場では、介護する人の多くが精神的にも肉体的にも追いつめられているのが現実です。そこで、介護認知症の祖母、重度身体障害の母、知的障害の弟、の家族3人を21年間にわたって1人で介護し、ブログ「介護に疲れた時、心が軽くなるヒント」を通じて介護する人たちの悩みを解消してきたリハビリの専門家(理学療法士)が、「介護の心を軽くするコツ」を紹介します。
「母が突然、歩けなくなってしまいました。すごく痛がっているし、地域包括支援センターはお休みだし、いったいどうしたらいいのか…」
お正月早々、Dさん(40代女性・会社員)から電話がかかってきました。
70代半ばの母親は軽度の認知症で、「要支援1」の認定を受けています。
しかし、ある程度、家事ができ、父親のサポートもあって日常生活に大きな支障がなかったため、介護サービスは受けておらず、ケアマネも決まっていませんでした。
Dさんの住まいは実家から自転車で20分ほどの距離です。父親に呼び出され、あわてて駆けつけたものの、母親はふとんから起き上がることができず、痛みはひどくなるばかり。意識ははっきりしていますが、かなり動揺しています。
しかし、腰の悪い父親とDさんだけでは、母親を動かすこともできません。
私は迷わず「突然動けなくなるのは、身体に何か異変が起こっている可能性があります。すぐに救急車を呼んでください」とアドバイスしました。
Dさんは「意識はしっかりしているのに、救急車なんて……」とためらっていましたが、手遅れにならないうちにと強く勧めました。
かつて、認知症の祖母が同じような状況になった経験が私にもあったからです。
数分後、救急車が到着。救急病院に搬送され、検査したところ、骨盤が折れていることが判明しました。